またまた変な言葉を聞きました。
「4パーミル・イニシアティブ」というものです。
もちろん「4パーミル」というのは0.4パーセントのことですが、その比率が表すものが問題です。
聞いたのは「山梨県でのブドウ剪定の枝の処理」というものについてのニュースです。
どうやらブドウ剪定で切り捨てた枝の処理を通して、空気中二酸化炭素を減らすという意図があるようです。
このサイトで説明されているように、土壌中の炭素濃度を高めることで空気中の二酸化炭素を減らして温暖化を防ぐということのようです。
そしてこの運動の名称である「4パーミル」とは、土壌中の炭素濃度を年間0.4%(4パーミル)ずつ増やしていこうということです。
やれやれ、「気候変動対策」を「大気中二酸化炭素濃度を減らす」ことだけに特化するとこういうおかしな話も出てきます。
山梨県ではブドウの木の剪定で多くの枝を廃棄しなければならないのですが、それを木炭化してさらにそれをそのまま地中に埋めることで炭素の固定化につながると考えているようです。
ただし、上記サイトの元ネタとなった農水省の研究機関の報告によれば、この主眼は「土壌の劣化防止」の方だということです。
つまり、炭素を土壌中に戻すことにより有機態炭素として堆肥とすることにより栄養素としたいということです。
これは、「土壌中への炭素の固定」とは異なります。
あくまでも植物への栄養供給の意味が強くなり、供給された炭素はそのまままた大気中へ戻るはずですが。
そういった先の話は知らぬ顔をしておき、とにかく炭素を地中に埋めるから炭素固定化だということで良いことにしてしまうのでしょう。
なお、「木の木炭化」により炭素として地中に埋め、植物の栄養素とするのではなく利用できない形で埋設すれば二酸化炭素濃度は減るのではないかと思うかもしれませんが、そううまい話ではありません。
まず、「木の燃焼」ではなく「木炭化」するためには、「炭焼き」を思い浮かべれば分かるように大量の燃料が必要です。
木が燃焼する場合はその持っている炭素分が酸化する熱量で燃え上がるのですが、木炭化の場合は熱量を外から補給しなければなりません。
その熱はどこから持ってくるのでしょうか。
どうせ、何らかの燃料を燃やすつもりでしょう。
そこで発生する二酸化炭素には目をつぶっているわけです。
なお、植物の炭素を地中に埋めて固定化するというのは、結局は古代の石炭紀に大量の樹木が石炭となった時の状況を再現しようとしていることになります。
しかし、その当時は木材を分解する腐朽菌と言われる微生物の活動が弱かったためにそれが可能となりました。
現在ではその働きがあるために石炭化は不可能でしょう。
またも「一見良さそうなSDGs」の例が出ました。