19世紀のアメリカの小説家、ジャーナリストであったビアスが、長年書き続けてきた警句をまとめたものがこの「悪魔の辞典」です。
社会の様々なものに対する風刺の精神が詰まっているものですが、そこから長い時間が経ってしまった今では、何に対する風刺かすらよく分からないものとなってしまっているのが残念なことです。
しかし、その口調の激しさと皮肉の厳しさから、その当時にはかなりの権威があったものに対する風刺であろうとは想像はできるものとなっています。
「悪魔の辞典」で扱われているテーマは、1,政治、2,宗教、3,戦争、4,文学、5,女性、6,人間性、7,言語、8,その他と分類できます。
しかし、解説で解説の奥田俊介が書いているように、「数の上では政治関係が一番多いが、もっとも強烈なのは宗教批判だ」という感覚は共感できます。
19世紀後半ではやはりアメリカ社会の中では宗教の権威というものがかなりの力を持っていたのでしょうし、だからこそ内部に多くの腐敗が生まれやすく、そこをビアスも批判したのでしょう。
なお、解説ではあまり触れていませんが、「女性」についてはその表現がかなり屈折したものとなっているようです。
あまり触れたがらないかのようにも感じられるものでした。
まだ女性解放には早すぎる時期であり、公的には活躍する場もない女性たちだったのですが、実質的には力を蓄えていたという時期なのでしょうか。
あと30年も後に書かれていたらかなり違った表現になっていたかもしれません。
本書に書かれている文章は、今となっては持って回った表現で何が何やら分からなくなるものですので、引用することは控えておきます。
読み通すにはかなりの時間が必要でしょう。
眠る前にベッドで読みには最適の本です。すぐに眠くなります。