まえがきに編者の一人南出さんが書いているように、「国語辞典には編集の裏話や苦心談をテーマとした本が広い範囲にわたって出版されているが、英語辞典に関しては少ない。」「一般の人にもっと知ってもらおうという話になった」
ということで、多くの英語辞書編集者や著者たちに書いてもらったということです。
ただし、読んだ感じではやはり「国語辞典の本に負け」のようです。
どうしても英語辞書編纂の技術的な解説になってしまい、読み物としての面白さは国語辞典関係には及ばないようです。
とはいえ、中身はかなり高度な内容を含んでいます。
PARTⅠでは「編者が語る英語辞書編集」、PARTⅡでは「EFL辞書の調査と研究」、PARTⅢでは「コロケーションと英語辞書」といった具合に英語辞書編集の注目点について解説されています。
ただし、あまりにも高度過ぎて一般読者にはよく分からないということでしょう。
ウィズダム英和辞典を編纂した井上永幸さんの話では、「主な編集方針」というものもまとめて箇条書きに示されていますが、中に「最新で安心して使用できる発音表記」を示すというものもありました。
やはり英語圏でも発音が時代と共に徐々に変わっているのでしょう。
それを追っていき現在もっとも確からしい発音で表示するというのはかなり大変なことかと想像できます。
ジーニアス英和辞典編者の南出さんは、レクシカル・フレーズの重要性について書いていました。
あまり知らない言葉でしたが、慣用句のイディオムとまではいかないものの、かなり固定的な表現でネイティブスピーカーであれば熟知しているものだそうです。
ただしあまりにも無意識に使われているものなので、これまでは英語ネイティブスピーカー対象の辞書には取り上げられておらず、それを参照して作られた外国語話者向けの英語辞書にも抜けていることがありました。
これを一つでも多く取り上げて習得の便を計ることも大きな使命だということです。
かつてはお世話になる機会も多かった英語辞書ですが、最近はまったく触れることもなくなりました。