著者のNOBU(金子信子)さんはヴォイス・トレーナーとして活動するかたわら、NPO法人で音楽を楽しむ非営利イベントの企画もされており、音楽を楽しむということを進めています。
世の中にはカラオケがそこら中にあるような状況ですが、自分の歌声に自信が持てないという人も多いようです。
声の出し方、言葉の使い方など、間違えて歌っている人が多いようです。
しかし、それを矯正するといっても著者本業のヴォイストレーニングでは本人を直接指導することができますが、本を読んで理解してもらうというのはかなり難しいであろうということは容易に想像できます。
それを何とかやってしまおうというのが、著者の「五十音歌唱法」というものです。
日本人が日本語で歌をうたうというのは、実はかなり条件が悪いことだということです。
白人のオペラ歌手、黒人のブルースシンガーなどを聞くと日本人には真似できないと感じることがありますが、それは根拠ないことではなく、日本人の骨格、声帯の構造、そして日本語の特性ということが大きく関わってくるようです。
日本人の骨格、といっても人によって違いはありますが、多くの人は胸郭が狭く肺が広がらないそうです。
そして、猫背の人が多いために腹筋や背筋も緩んだ状態で、喉もふさがりがちです。
また、顔は横幅が広く、奥行きが無いために口の中の奥行きも狭く声を反響させるスペースが少ないということです。
さらに、声帯が白人と比べると短いために、音域が狭くまた子供の声のように聞こえてしまうという特徴もあります。
また、日本語は高低アクセントであり、英語などのような強弱アクセントの言葉と比べると呼吸法も胸式呼吸で発音しがちだそうです。
そのため、歌を歌うからといってすぐに腹式呼吸をするというのも難しいとか。
また、日本語の特有の高低アクセントを活かしていない歌も多く、そこが日本語の歌を相手に伝わるように歌うということを難しくしています。
このような悪条件が重なっている日本人の歌唱ですが、それを少しでもよくしたいというのが「五十音発声法」だそうです。
五十音をきちんと相手に伝わるように発音するということは、結構難しいことのようで、しっかりとできている人は少ないようです。
それがさらに「歌を歌う」場合を考えると、さらに難しいことになっています。
五十音の中でも、有声か無声かの区別(だ行、な行等は有声、た行、は行等は無声)。
調音点が軟口蓋であるもの(か行等)、歯茎であるもの(さ行等)、唇であるもの(ま行)
調音法が、破裂音のか行、摩擦音のさ行、鼻音のな行、等々
こういった発音の特徴があることを理解し、それごとにきちんと発する訓練をするということです。
また、声の響きというものを活かすための訓練としては「母音唱法」というものがあります。
歌詞を「ん」以外の音をすべて母音のみにしてしまい歌うというものです。
この場合、必ず本来のメロディーで普通の歌詞と変わらないようにして、ただし子音を発音しないことが重要だそうです。
また母音の別による声の響きを感じ取りそれを活かすといったことも説明されていますが、本を読んだだけでは少々難しいように感じました。
歌を歌う、あまり難しく考えずにやってしまうことですが、奥にはこのような理論が隠れているようです。