私の表向きの趣味はコーラスであるということは、前にも書いたことがありますが、それに少し有益なものかもしれない本を読みました。
もちろん、そちらの方では指導の先生の教えるように歌っているだけで、この本を読んで合唱指導者の地位を狙っているなどということは決してありません。
とはいえ、指導テクニックを知っておくことは指導される側にとっても無駄にはならないようです。
その点、この本の著者の清水さんは多くの合唱団で指導に当たっているという方ですので、色々とためになる話がありそうです。
まず、歌う姿勢が大切というのは当たり前すぎるのですが、おろそかにしていることでもあります。
姿勢を正し、準備運動を十分にやってから声を出さねば。
発声練習も大切ということも分かってはいるのですが。どうしても音程を正しく取るのに精一杯でなかなか声の質にまでは注意が回りません。
声の共鳴の仕方、母音の揃え方といったところは、なかなか素人では難しい話のようです。
写真で口の形から口腔内の様子まで説明されていますが、やはりそれだけでは分かりにくいものでした。
日本語の歌を歌う時、どうやって発音するかも簡単な話ではないようです。
「ん」をどう発音するか。これも代表的なものだけで3種類あるそうです。
「n」「m」「(英語のingの発音)」ですが、それによって口の形と舌の位置が異なるそうです。
また、これも実際に歌っている時には迷うことが多いのですが、「子音+えい」「子音+おう」も綴りと実際の発音が異なるので揃える必要があるようです。
音楽の調(ハ長調とかト長調とかです)によって性格が違うのかどうか、これは基本的には「違わない」というのが模範解答なのですが、「ある場合もある」そうです。
それは、特に管楽器の場合に多いそうですが、楽器の都合で響きやすい音と言うものが決まっており、それを使った調では明るい音になり、そこからずれた調ではくすんだ音に聞こえるということがあるようです。
こういったところは、演奏の経験な著者ならではの解説でした。
巻末に、楽曲例として、ラッススの「Matona mia cara」が使われていました。
これは、私が最初に合唱を始めた若い頃に歌った曲ですので、懐かしく感じました。
とはいえ、この本での解説は非常に詳しく丁寧なもので、かつての闇雲に歌ったものとは別の曲のように感じます。
歌詞が訛ったようなイタリア語だったのですが、これは「イタリアにいるフランス軍に属するドイツ人傭兵が話すような言葉」だったということです。
このような曲は他にもいくつもあり、「テデスカ」(ドイツ風に)と呼ばれる一群のものだそうです。
ドイツの片田舎から先進国イタリアに傭兵としてやってきて、きれいなお嬢さんに一目惚れして歌いかけるというイメージでした。
というような本を読んで、これだけでちょっと歌がうまくなったような気がしているのでした。