歌を歌う時に気になるのは「良い声」というものです。
ただし、どんな声が「良い声」かと言われるとすぐに答えることができません。
せいぜい、誰それのような声といったことしか言えないようです。
この本では「良い声」とは「柔軟な声」だということです。
合唱で取り上げる作品には多種多様なものがあり、それらに対応して歌うためには柔軟でなければならないということです。
そのような「柔軟な声」を出すためには「息の流れ」を上手に使うこと。
そのためには身体に余計な緊張を加えず、日常の呼吸のような感覚を保ち、しなやかな口の動きを意識することだそうです。
そのための身体の姿勢、リラックスの仕方、トレーニング、ストレッチなど、図解入りで細かく説明されています。
ただし、これだけ図示されていてもやってみようとするとどうもぴったりと掴めないというのは、本を読むだけで済まそうとすることの限界でしょうか。
発音のトレーニングということも解説されています。
歌う歌は日本語だけとは限りませんので、外国語の発音も意識しなければなりません。
母音を意識したトレーニングというものも、日本語だけではおろそかになりがちですので、きちんと考えてやらなければならないのでしょう。
子音は日本語では分離して現れることがありませんので、さらに意識的にトレーニングをしていくことが必要です。
なお、歌唱法のなかでも合唱で特有なのが「声を合わせる」ことです。
これがうまく行かなければいくら上手な人が揃っていても合唱として美しく聞こえません。
そのためには、「仲間の息の流れを感じる」ことが大切です。
さらに「響きの方向をそろえる」とまで言われると、さすがに高度すぎるようです。
「カンニングブレス」というのも重要なテクニックで、無理してすべての音符を歌いきるより、適度にブレスを入れて音をきちんと出す方が良いようです。
あせって息を吸うのではなく余裕をもってやること。
本番に向けて緊張をほぐす方法まで書いてあり、「必ず役に立つ」という題名はウソではないというところでしょうか。