中国の歴史を96人の人物を描くことで知ろうという、欲張りな本です。
登場する人物は各時代の重要人物、象徴する人物だけに絞っていますが、それでも多くの人を除いているようです。
しかし、私も中国史好きを自認していましたが、それでも分かるのは隋唐時代以前ばかり、それ以降の時代の人々には名前も知らないという人物がかなり出てきました。
元代 トクト、明代 海瑞、徐霞客、清代 曾静、ヘシェン、汪瑞、秋瑾といった人々は名前も初めて聞きました。
それでもかなり厚い本ですが、96人分の伝記を書くにはこれでも足りないようで、一人当たりのスペースは多くて4ページ程度、かなりコンパクトな記述となっています。
なお、著者のおそらく中心人物のメア教授はペンシルヴァニア大学中国文学ということで、原著も英語と思われます。
そのためか、表記も漢字を基本としているのですが、そのフリガナは中国語読みとなっていて、日本語読みに慣れている身にとってはかなり違和感を感じるものでした。
孔子は「コンズー」、司馬遷は「スーマーティエン」、陶淵明は「タオユェンミン」といった具合です。
諸葛亮(孔明)に至ってはカタカナで何と書いてあるのかもよく分からないものでした。
まあこれらを「こうし、しばせん、とうえんめい、しょかつりょう」と読んでも分かるのは日本人だけですから、世界的には中国読みというのが良いのでしょう。
96人の最初は婦好、殷王朝武丁王の王妃ですが、1976年にその墓が発見されたことにより有名になりました。
96人の最後は鄧小平、現在の中国繁栄の基を築いたともいえる政治家です。
宋代末期に方臘という人物が率いていた宗教教団がマニ教です。
これはペルシアで誕生し中国に伝わりました。
そして政府、儒教、仏教の各勢力がよってたかってマニ教を根絶やしにしようとしたのですが、しぶとく生き延びました。
元代も生き残り、それが大きく影響を及ぼした仏教の異端派が白蓮教で、その反乱軍に加わった朱元璋が建てた王朝を明王朝というのはマニ教を中国語で明教と言ったからだそうです。知らなかった。
まあ、知っていることは知っていたけれど、知らないこともかなりあるということが分かりました。
