爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「一冊でわかる インド史」水島司著

昔学校時代に世界史の中でインドの歴史も習いましたが、あまりにも広大な地域に周辺から次々と民族が入り込んでは王朝を作るという印象で、あまり「わかりやすい」歴史ではなかったと思います。

それはこの「一冊でわかる」という本を読んでも、同様でした。

やはりごちゃごちゃとして分かりづらいものです。

 

四大文明の一つと言われるインダス文明を産み出した人々は、現在もインド南部に暮らしているドラヴィダ人ではないかと言われますが、彼らもそれ以前は西方に住みその後インドに移動してきたのかもしれません。

そのせいか、インダス文明メソポタミア文明と交流があり、その影響を受けていたようです。

 

アーリヤ人の一群がその後インドにやってきてそこに多くの国々を作ります。

ただしこれもガンジス川流域のインド北部に限られており、デカン高原やインド南部にはアーリヤ人に押し出された人々が住んでいました。

 

インドは哲学、宗教でも多くのものを産み出しました。

仏教はインドから流出してから後の方が発展し、現在はほとんどインドには信者がいません。

ヒンドゥー教は遅れてグプタ朝時代に成立しましたが、現在では人口の8割以上が信仰するインド第一の宗教です。

ただし、ヒンドゥー教には特定の開祖もいなければ、聖典もありません。

入信の儀式もなく、全体を束ねる組織や階級もありません。

複数の神を信仰する多神教ですが、自然崇拝的な信仰から哲学に至るまであらゆる要素を含んだ宗教だということです。

もともとアーリヤ人の上層部のバラモンたちの宗教としてバラモン教がありました。

それがインド先住民の宗教も少しずつ融合させてヒンドゥー教となったと見られます。

 

宗教では、その後15世紀になってナーナクという人物が身分差別を批判したあらたな宗教を興します。

それがシク教で、シクとは「弟子」を意味します。一方、「師」を意味するのはグルと呼ばれます。

シク教徒は現在のインドでは国民の1.7%ですが、パンジャーブ州に限れば過半数シク教徒です。

 

その後も次々と周辺から民族が流入し、国家を建てます。

イスラームが侵攻して以来、インド北部は王朝としてはムスリムとなりますが、国民の大部分はヒンドゥー教のままで、改宗することもありませんでした。

ムガル帝国はその最大のものですが、国民の宗教に触れない間は良かったものの、それに圧力をかけると途端に衰退します。

それがイギリスによる支配を招いたとも言えます。

 

イギリスの統治下のインドは徹底的に収奪されたとも言えます。

それは財産だけに止まらず、戦争がある時には兵士を徴発され戦地に向かわせられました。

ようやく独立を果たしたのは第二次大戦後になってからのことでした。

 

本書最後は現在のモディ首相による「モディノミクス」まで書かれています。

経済発展は著しく、世界への影響力も強めています。

しかしいまだにカーストによる就労差別や結婚差別も残っており、女性の低い地位、生活インフラの貧弱さなど問題は山積しています。

この先どうなるのか。

それは著者も分からないようです。