爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「王家の風日」宮城谷昌光著

古代中国で商(殷)の国を周が倒して王朝を興したのを商周革命(殷周革命)と呼びますが、そのいきさつを描いた作品です。

この時期の歴史は司馬遷史記にはあるものの、まだ公式の史書はない時期ですので挿話はあちこちに残っているものの確定的なものは不明でしょう。

またそれらの話も勝って王権を奪った周の側からの見方であり本当のところは分からないというのが実際のようです。

かなり後世の作である「封神演義」もこの時代を扱ったものですが、それは歴史とは大きく異なります。

 

ざっとあらすじを言えば、商の王朝の最後の王の受王(紂王)が暴政を尽くし、それに周の昌(文王)が反旗を翻しその子発(武王)が商を滅ぼすということなのですが、それに多くの人々が関わってきます。

商王朝側では箕子、干子、周側では太公望なども重要な登場人物であり、宮城谷さんもその後「太公望」といった本を書いてはいますが、この話では箕子が一番登場場面が多いようです。

とはいえ箕子が主人公とまでは言えないでしょう。

 

周王朝も後半になって春秋戦国時代になれば多くの書物もあり社会の様子も分かることが多いのですが、周でも前半はあまり確かではありません。

ましてやその前代の商王朝の時代のことは断片的にしか分からないことでしょう。

それを小説としてリアリティーを持たせるためにはかなりの部分を想像力で補わなければならなかったのでしょう。

 

この作品は宮城谷さんのごく初期のものであり、最初は出版社もなかなか決まらずに数年経ったということです。

また宮城谷作品のは特徴的なことですが、現在はほとんど使われないような漢字・熟語を使っているということで、周囲からはそれを批判されることもあったのですが、そこは信じるままに貫き通したということでしょう。

完成度は低いかもしれませんが、パワーを感じるものとなっています。