爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

プラスチック使用削減、しかし紙や植物性資源に転換すれば良いのか。

「気候変動対策」や「海洋廃プラスチック汚染」と何か結びつきそうもない話から急に「脱プラスチック」という風潮が強まっています。

 

しかし、その対策として提出されている方向性は、紙や植物由来材料への転換というところばかりのようです。

 

プラスチックは、現在世界で年間約4億トンが生産されているそうです。

その用途として一番大きいものは包装資材、そして各種部品類、繊維として衣料品など、さらに農業・漁業用資材なども忘れてはなりません。

 

プラスチック代替品として提案されているのは、紙類・麦わらや寒天などの植物性材料といったものが多いようです。

石灰石から作られる「石灰石ペーパー」と呼ばれるものもあるようですが、これは50%以上石灰石を含むものの、かなりの量の樹脂を含むためプラスチック代替の過渡期的製品ということでしょう。

 

紙類についてみると、現在の世界生産量は4.2億トンということです。

 

紙の原料は木材から作られるパルプですが、木材の世界の生産量は年間35億㎥、単位が異なりますが、比重はだいたい1よりは小さいとしても0.5より低いものはないでしょうからトンで表すとその半分以上で20億トン以上にはなるでしょうか。

その半分以上は主に生産国などで薪炭として使われ、残りが紙原料や建築資材の材木などとなります。

 

木材の生産国は途上国が多いのでしょうが、その資源は限られており使用が増えれば森林の枯渇につながります。

 

プラスチックを使い捨てにするのがマズいからと言って、単に原料を紙に代えるというのはそれ以上の環境破壊につながりかねないことは明らかです。

 

その他の「麦わら」や「寒天」に至ってはちょっと使用量が増えたらすぐに原料確保が難しくなるのは目に見えています。

 

それほど、プラスチック使用量というものが多いということでしょう。

 

「レジ袋削減のため有料化」という猿芝居が始まる頃にも書きました。

「レジ袋だけ削減したところで、他の包装資材がその何十倍、何百倍もあるのはどうするのか」

レジ袋を止めてマイバッグとやらを持って行っても、スーパーで買った商品のほとんどはどれもプラスチック製のトレイに載せられ、何重にもラップを掛けられたプラスチックだらけ。

それに何の疑問も持たないのはなぜか。

 

 

繊維類に至っては、「化学繊維」というプラスチックの量は天然繊維をはるかに上回っています。

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2016年で世界で年間約9000万トンの生産量のうち、化学繊維が6500万トン、天然繊維の綿、羊毛、絹を合わせても2300万トン余りと化学繊維の半分にも及びません。

 

脱プラスチックと言って化学繊維を止めたらどうなるか、目に見えています。

 

 

今、安易に、また「環境重視のポーズ」のみで「天然資源由来の製品への転換」などと言うことをやるのは決して「環境保全」にはつながらないことは明らかです。

 

半世紀以上も前の私の子どもの頃以前には、布の切れ端もすぐに捨てることはなく大事に取っておかれましたし、それは紙製品でもそうでした。

包装紙も貯めておいて何かに使うとか、新聞紙もさらに再利用ということをしていたのを覚えています。

衣類も中古が十分に価値を持っていました。

まず「使用量を減らす」ことを考えなければならないのでしょう。