爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「賃上げを伴う2%の物価上昇」が安定的ではない明確な理由

物価上昇は2%どころかそれ以上になっているのに、賃上げが伴っていないために「安定的ではない」として日銀は金融緩和政策の転換を拒んでいます。

 

政府は企業に対して飴と鞭両方の政策を取り賃上げを促していますが、余裕のある大企業では大幅な賃上げをしているところもありますが、大半の中小企業は全材料の価格上昇を製品価格に転嫁することすらできず、ましてや従業員の賃上げなどできるはずもありません。

最低賃金の金額大幅アップとするにも、多くの企業は困難と主張していました。

 

このように、社会全体として物価上昇が起きていても、それですべての企業が従業員に対して賃金アップをできるわけではないのです。

そこにその企業の体力の差が出てくるとともに、業種業界の全般的な収益構造も関係してきます。

人手不足が激しいと言われている業界では賃金引き上げの余地もほとんど無く、そのため労働者の確保も難しくなっています。

たとえばバスタクシー、トラック、介護施設などの特に人手が逼迫している業界ではその運賃や介護費用の値上げということがほとんどできない構造となっており、企業努力での賃上げということも不可能です。

 

このように、社会全体で物価上昇が起きれば賃金上昇も伴うということはあり得ません。

もしもトラック運賃、バスタクシー料金、介護費用が急激に上昇すればさらに大きく物価上昇も加速してしまうでしょう。

 

物価上昇が2%になればみんなの給料も2%ずつ上がってめでたしめでたしなどと言う社会ではないということです。

こんな簡単な社会の姿すら分からない連中が日銀や政府の上層部に座っています。

 

私が就職した1970年代はすでに高度経済成長が終わっていた時期ですが、それでも物価も賃金も今と比べればはるかに大きく上がっていました。

最初の頃は給与の上昇率が10%近くもあったと思います。

それでもその賃上げの比率は会社によって大差がありました。

労働組合の賃上げ交渉の基礎資料として、同業他社とよぶ企業の賃上げ状況がありましたが、いずれの会社も弊社(ボロボロの会社という文字通りの意味です)よりはるかに上でした。

これは「同業他社」といってもその経営多角化の状況が全く異なったためです。

ここでいう「同業」とは当時の「蒸留酒業界」を指しますが、その中でもK社、T社はすでにバイオ産業の方面に進みそちらでの収益の方が主流となっていました。

その点、弊社(何度も言いますがボロボロの会社)では蒸留酒よりさらに収益の悪い酒類(それが何かはヒミツ)に手を出したために厳しくなる一方。

他の会社のように賃上げをできるはずもなく、同業社というのは名ばかりでした。

 

このように、「物価上昇が常態化する社会」というのは、賃金上昇が一様に伴うはずもなく、産業間、企業間、労働者間の格差がどんどんと拡大するだけの社会です。

儲けられない産業・企業はもう止めなはれというのが政府の本心でしょう。

やめて労働者を成長産業に移してくれということなのでしょう。

それが言えずに(言ったら政府もおしまい)カッコだけは企業支援などと言っています。

偽善者というのが彼らの本質です。

 

さらに「物価上昇の社会」というのは投資家と言われるギャンブラーたちにとっても好適な環境です。

物価上昇すなわち確実な資金の増加であり、増えた分をさらうのがギャンブルの本質です。

結局は弱肉強食の時代そのものであり、弱くて負けた人間には住むところすらありません。

 

「安定的な物価上昇」などと言う言葉は本質的に矛盾しています。

そういったことが平気で言える人間がまともなわけもないでしょう。