スペインは日本との関係がそれほど深いとは言えず、戦国時代の末期にやや触れ合った程度でその他はさほど馴染みのある歴史ではないようです。
歴史の教科書で習った覚えがある事項でも、アルタミラ洞窟の壁画、かなり飛んで後ウマイヤ朝、レコンキスタ、新大陸の富の強奪、そしてスペイン内戦とフランコ政権といったところでしょうか。
しかしこの本のように「通史」という形で概観すると、多くの民族が通り過ぎていったようで、その幾分かは残って積み重なり現在のスペインというものを作り出していたようにも見えます。
本書「はじめに」にも書かれているように、スペインの歴史は「激変」というのが相応しいほどに変転極まりないものです。
その担い手も古代から多くの民族がやってきては作ってきました。
バスク人、ケルト人、フェニキア人、ギリシア人、カルタゴ人、ローマ人、ゲルマン三民族、西ゴート人、イスラム教徒、ユダヤ人、ハプスブルク王朝、ブルボン王朝などが入り乱れて足跡を残しています。
中にはヨーロッパを席巻する勢力となったものもあります。
波乱万丈の歴史は近代から現代に至っても同様であり、スペイン内戦からフランコ独裁、王朝復古と政治体制も大きく変動するという情勢です。
紀元前15000年頃のものとみられるアルタミラ洞窟の壁画というのは誰でも聞いたことがあるかもしれませんが、それがスペインにあるということはそれほど知られてはいないかもしれません。
クロマニヨン人によって書かれていますが、現在では後期石器時代の「マドレーヌ文化」に属するものと言われています。
その後、紀元前3000年頃にはおそらく北アフリカの住民がジブラルタル海峡を渡ってきましたが、その民族は不明です。
その後、ドルメンなどの巨石の遺産を残した巨石文化の住民たちがやってきましたが、この民族も不明です。しかしスペインだけでなくイギリスやフランスにも巨石文化の遺跡を残しました。
フェニキア人がスペインにやってきて交易都市を作ったのは紀元前1200年から800年頃にかけてのことですが、その頃には北部からケルト人も進出しています。
さらにギリシア人も植民都市を建設していきます。
やがてカルタゴの支配下にはいるのですが、そのあとにはローマ帝国が進出してきます。
ローマ軍はイベリア半島の制圧に200年もかかりましたが、制圧後はローマ属州ヒスパニアとしてローマの経済を支えるところとなり、ヒスパニア出身の皇帝も何人も出しています。
その後侵入してきた西ゴート人が西ゴート王国を建てるのですが、それが衰退した頃にはイスラム教徒の侵入と後ウマイヤ朝の樹立があり、かなりの繁栄をすることになります。
北部の山地に押し込められたキリスト教徒ですが、レコンキスタという回復運動が強まり、アラゴン王国のフェルナンド2世とカスティーリャ王国のイサベル王女が結婚することで両王国が統一され、最終的にはイスラムを追い出してスペインの回復となります。
その後は王家間の通婚によって血縁が深まりハプスブルク家がスペインを領有、神聖ローマ帝国皇帝を兼ねることもありヨーロッパの中で勢力を増していきます。
その後の経過は略しますが、どこを見ても戦争と流血、拷問と虐殺が次々と起きます。
それは20世紀になっても同様で、フランコ政権の反対派虐殺や市民の暴動など次々とつながっているかのようです。
一時は新大陸の銀を大量に獲得しヨーロッパでも大きな力を持ったのですが、その銀は結局は国を豊かにするのには使われなかったようです。
難しい国情であり、それは今でも続いているのかもしれません。