リスク学者永井孝志さんのブログは色々と参考にさせて頂いていますが、このところ連続で除草剤グリホサートのリスクについて書かれています。
さまざまな方向から見た除草剤リスクということで、こちらでも紹介していきたいと思います。
グリホサートは1970年にモンサントにより開発された除草剤で、ラウンドアップという商品名で知られています。
世界でも非常に大量に使われている除草剤ですが、それはグリホサート耐性の遺伝子を遺伝子操作で作物に入れ、農地にもそのまま使えるようにしたためで、大豆をはじめ多くのグリホサート耐性植物が作られ栽培されています。
そのため、反対派の活動も非常に活発で特にヨーロッパでは使用制限を求める人が多くなっています。
彼らが様々な毒性について調査研究し、特に発がん性を強調することで使用禁止に追い込もうという動きがあります。
永井さんもこの周辺から記述を始めています。
今のところ4編の記事がアップされています。
1.尿中から検出された際の健康影響の判断方法
2.農薬の疫学調査はなぜ難しいのか?
3.グリホサートの発がんリスクの大きさはどれくらいか?
4.発がん性物質の受け入れられるリスクレベル
かなり微妙なレベルの影響しかないので、その研究方法も厳密にならざるを得ないのでしょう。
日本ではそれほど話題にならないようですが、欧米ではグリホサートは関心が高く研究結果も時々報道されるようです。
これまでは「野菜などから検出された」という報告が多かったのですが、最近多いのが「ほとんどの人の尿からグリホサートが検出された」というものです。
これについての解説が記事の第1報です。
研究報告にも色々なタイプのものがありますが、一般消費者の尿を検査しというものでもほとんどから検出されています。
ただしその濃度は非常に低いもので、0.1~1μg/L程度ということです。
またグリホサートを含む食品を食べた後の尿への排出も調べたものがあります。
しかし尿に出る量はごくわずかでほとんどは便として排出されるようです。
尿中の排出量自体は人体に対する毒性を直接見ることには関係しませんが、摂取量と尿中濃度の関係を推定することで体内量とその毒性影響も推定することができます。
ただし、いずれにせよグリホサート自体の毒性を示す濃度よりはるかに低い値ではあります。
次の記事は、「農薬の疫学調査はなぜ難しいのか」という題です。
記事1でグリホサートが広く人体内に取り込まれていることは分かりましたが、その健康影響があるのかどうかを判断しなければなりません。
このような調査の際に有効な方法が疫学調査なのですが、農薬類の場合はこれが難しいという話です。
グリホサートは発がん性があるかどうかということが議論の焦点となっていますが、これも研究者、研究機関によって見解が分れることになり、定説がありません。
このような状況では観察範囲を広く置く疫学調査が有効なことがあるのですが、農薬の場合は難しいということです。
その理由が解説されています。
農薬の場合は実際にどれほど使われ、どれほどが人体に曝露したかの推定が難しいということです。
農薬の害を一番受けるのはその作物を食べる消費者ではなく、農薬を散布する農業者です。
しかし彼らの農薬使用は非常に複雑でありその使用量も正確な記録があることは少なく、データの解析が困難なことが多いようです。
農薬使用も除草剤だけということはあり得ません。殺虫剤殺菌剤も使われます。
交絡因子と言いますが、その他の条件が非常に複雑になるためデータ解析が困難となります。
実際にこういった解析を行った論文も出てはいるのですが、世界的な研究であっても精度に問題があると評価されるものもあり、難しいということは分かります。
(批判はできますが自分で研究を行えと言われてもその計画策定自体できそうもありません)
(つづく)