爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

除草剤グリホサートの発がん性について、松永和紀さんの解説

除草剤グリホサートは発がん性があるという報告がされており、一般的にも関心が高いものです。

これは日本ばかりではなく欧米でも同様(あるいはそれ以上?)で専門家もさかんに研究をしているようです。

 

ただし、その情報には誤ったものの多く含まれており、それがさらに拡散するという状況でもあります。

 

これについて科学ジャーナリスト松永和紀さんが解説記事を書いていますが、非常に分かりやすく正確でもあると思いますので紹介しておきます。

wedge.ismedia.jp

記事の最初に「農薬の有害性で質問が相次ぐ2大農薬のグリホサートとネオニコチノイド」と書かれていますが、おそらく実際にそうなのでしょう。

有害性を強調する週刊誌記事なども続出していますので、関心も高くなります。

 

グリホサートという成分名より「ラウンドアップ」という製品の名称の方が知られていると思いますが、モンサント社により開発された除草剤です。

この除草剤に耐性を持つ遺伝子を持つ作物が開発されたため非常に使用量が多くなりました。

 

グリホサートが発がん性を持つという話は、フランスのセラリーニという科学者が2012年に動物実験の結果として発表したことで広がりました。

ただし、この実験は科学的手法の有効性に欠けるとしてレベルの高い学術誌には掲載されず、低レベルのものにしか発表されなかったのですが、セラリーニは論文としてよりも映画で発表するなどしてメディアには大きく取り上げられました。

さらに2015年に世界保健機関(WHO)の外部機関である国際がん研究機関(IARC)がグループ2A(おそらくヒトに対して発がん性がある)としてグリホサート、マラチオン、ダイアジノンの3つの農薬を分類しました。

 

ただし、これに対し欧米の公的機関はグリホサートの発がん性については否定しています。

日本の食品安全委員会も発がん性は認められないという結論を発表しています。

このようにIARCと各国の公的機関の見解が別れる理由として松永さんは以下の3点を挙げています。

(1)ハザード評価かリスク評価か
(2)どのような質のデータを評価に用いるか
(3)体に取り込むルートを問わないか、残留農薬として食べて摂取するルートに限定するか

 

実はIARCの発がん性分類というものは時々報道されることもありますが、実際のリスクの大小に関係なく、リスクになり得るハザードであるかどうかだけを判断しているため単に危険性が否定できないというものも含まれています。

その下に分類表も掲載されていますが、グリホサートと同じ2Aには「65℃以上の熱い飲み物」や「牛肉や豚肉などのレッドミート」も入っています。

こういったものも確かに発がん性を有するものですが、そればかりを大量に摂取するわけではありませんので実際にはほとんどガンになることは少ないということです。

 

さらに、IARCは直接自分たちで研究するわけではなく様々な学術論文を検討して結論を出すのですが、これも絶対的な真実というわけではなく、単に実験してみましたというものもあり再現することができないものも数多くあるようです。

 

なお、ヨーロッパの国では確かにグリホサートの使用を一部禁止としているところもありますが、決して「世界の大勢」などとは言えないものです。

 

グリホサート反対派の人々などはこれらの事実のごく一部を取り上げて宣伝することもありますが、全体の事実をよく確認してもらいたいものです。