爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「本当にあった医学論文」倉原優著

医学論文といえば難しそうなイメージですが、中には驚くほどのものがあるようです。

著者は内科のお医者さんですが、常にさまざまな最新論文には目を通しているそうです。

しかし、その中には傍から見れば思わず笑ってしまうようなものや、普通では見ることのできない病態などを扱っているものもあります。

そういったものをぜひ皆さんにも紹介したいということで書籍にしたそうです。

ただし、日常の臨床にはまったく役に立たず、医学的妥当性も無視しており、軽い気持ちで読んで下さいというものです。

 

まずは珍しい症例から。

 

魚の「ダツ」が耳に刺さったというものです。

外傷性鼓膜穿孔という症状ですが、その刺さったものがダツという魚で、時速50㎞以上のスピードで突進してくるため、稀に眼に刺さって失明したり、頸動脈を貫いて死亡したということもあるそうです。

この症例では11歳の少年の耳に飛んできて鼓膜を穿孔したそうですが、緊急鼓膜形成手術を行い聴力は回復したということです。

ダイビング雑誌などではダツの多い海域でのダイビングは避けるように警告されているそうです。

 

 

医学の都市伝説で、「大腸に電気メスを入れたら大腸にたまったガスに引火して大爆発を起こした」というものがあるそうです。

これについて過去の論文をまとめた検索結果がありました。

20例の症例が報告されており、1人が死亡しているそうです。

引火の原因となるガスはメタンや水素ですが、手術前の腸管前処置を行うことで危険を減らせるということです。

 

バンジージャンプなるものは、日本では1994年から行われているそうです。

あんな怖ろしいものをよくやるものだと思いますが、さすがに安全性の考慮は十分されているそうで、あまり事故例は聞きません。

しかし、実行した人の体調次第では思わぬ症状になることがあるそうです。

24歳の女性がバンジージャンプを行った後、両眼の結膜下出血を起こしてしまい、視力障害を起こして結局は回復しませんでした。

彼女は小児期にはてんかんの既往歴がありましたが、それはすでに軽快しており、当時は服薬もしていませんでした。

なぜこのような症状が起きたのかははっきりしていませんが、網膜の血管内圧が上昇することによってこのような眼科的な危険性が起き得るということです。

やはり、これからも絶対にやらないようにしましょう。

 

医学論文の著者の順番ということにも触れてありました。

通常、医学論文は一人の著者だけで発表することはまず無く、数名の著者が名前を連ねます。

その順番というものが少し問題となることがあるようです。

まず、筆頭著者(ファーストオーサー)は実際に論文を書く人ですので、これは間違いありません。

二人目以降を共著者といい、その論文に関して何らかの協力や支援などを行った人の名前が続きます。

最近の欧米の論文では、共著者の順序はその研究への貢献度の順番であることが多いようです。

すなわち、筆頭著者の次から貢献度の高い順番に並ぶということになります。

ところが、日本ではこれまで伝統的に一番最後(ラストオーサー)に教授やリーダーの名前が入ることが多かったのです。

なお、連絡著者(Corresponding Author)というものもあり、その論文を投稿した出版社との連絡を担当する人を一人選任することがありますが、それは普通は筆頭著者や貢献度の高い共著者が当たることが多いようです。

 

実は日本流では困ることがあります。

その論文が出版された後、他の論文に引用されることがあります。

その時に「著者は最初の3人のみを記載し、その他は「et el.」とする」というルールがある場合が多いのです。

すると、最初の3人を機械的に記載するために日本流であれば最後が一番偉い人なのにそれが出てこなくなるわけです。

早く欧米流に揃えれば良いだけの話なのですが、まだまだ続きそうです。