ニセ医学と闘う内科医、NATROMさんの「NATROMのブログ」に新記事「低気圧の体調不良に五苓散が効くのか?」が掲載されていました。
医療の状況が厳しくなっていますが、少し緩和した時に書かれたのでしょうか。
読者からのリクエストで、「低気圧による体調不良に漢方薬の五苓散が効くという研究報告があるが、NATROMさんはどう考えるか」というものがあったそうです。
そこで、色々と調べてみたが、研究報告自体はいくつか見られるがそれほど質は高くない。ただし、実地臨床にはこういった漢方薬は有効だろうという結論だということです。
この調査過程が詳しく書かれていますが、なかなか参考になるので紹介しておきます。
医学論文はまとまった検索方法が確立されているのですが、漢方薬についてはあまり英文になっているものが多くないのでで、この方法では難しいようです。
そこで、NATROMさんは積極的にGOOGLEを使うようです。
ただし、危険性もありますので注意は払っています。
とはいえ、最初の検索ワードは「低気圧の体調不良には五苓散が効くという研究」
実に、そのままの文章での検索です。
これで結構な数の情報が出てきますが、多くは「開業医のサイト」「和文医学雑誌」「製薬会社のサイト」だそうです。
「開業医のサイト」は玉石混交で、高いレベルのものもあれば、トンデモもある。
「和文医学雑誌」はそれほど質が高くはないものの、一定の質は確保。
「製薬会社のサイト」はあからさまなトンデモはないが商売優先なので注意。
といったところです。
ここまでで出てきたのが、ちょっと古いのですが1998年に出た論文があり、それがあちこちに引用されているようです。
次に、医学論文の検索を始めるわけですが、日本語論文の検索の「医中誌」というのが有料で、自宅ではできないので、PubMedというアメリカの有名サイトの検索から始めました。
ただし、「低気圧による体調不良」が英語にすれば何なのかというのが最初の問題です。
そもそも外国にそういった病気はあるのかどうかも分かりません。
それでも何とか「Barometric Pressure Headaches」がそれらしいとは分かったそうです。
それで検索してみましたが、論文数は少なくまた内容概観を見てもどうやら見当違いのようです。
結局、職場の「医中誌」で日本語論文を調べたそうですが、「低気圧による体調不良」というものに関する論文はあるものの、それと五苓散と言う漢方薬を結びつけた論文は2件しかなく、それも1件は症例報告のみ、もう1件はよく分からないものでした。
ということで、どうやらそれらしい論文は上記の1998年の古いもののみのようです。
ただし、現在その論文は参照不可能のようで中身がはっきりしません。
孫引きの報告書の中から推定すると、どうやらその試験はデザインに問題がありエビデンスレベルは高くないようです。
とはいえ、そもそも「天気が悪くなると頭痛がする」という患者の訴えは非常に対処が難しいもので、場合によってはプラセボ効果だけでも緩和される可能性もあり、確かな薬効を証明するということは困難かもしれません。
結論はややあいまいにされていますが、こういった話の検証のやり方という意味では参考になりました。