リスク学の研究者でブログ「リスクと共により良く生きるための基礎知識」を連載している、永井孝志さんが最近の話題が集まっている「デパ地下」と「ロックフェス」について比較しています。
専門家の指摘ではデパートの食品売り場、いわゆる「デパ地下」の感染リスクが大きいとし、それに応えて入場人数の制限などの対応策も取られています。
また、ロックフェスティバルというコンサートが各地で開かれようとしましたが、反対の意見が多く断念したところもあり、開催強行したところもあるようです。
永井さんは「ソーシャルリスニング」という手法で、一般の人々がリスクについてどう考えているかと言うことの解析も行っています。
これは対象について一般人がどのようにリスクを考え、どう発信したかをまとめるというものですが、それによると専門家の解析では高リスクと見られるデパ地下に対しては同意的、擁護的な意見が多く、リスクがあっても許容してしまう傾向が明らかです。
それに対し、「観客数を制限し声を出さずマスク絶対」という条件を厳守すればですが、比較的リスクが少ないと考えられるロックフェスには擁護する意見は少なく、中止すべきと言うものが多いようです。
ただし、特に「デパ地下」が高リスクとして取り上げられた背景には「目立つ」という点もあるようで、例えばデパ地下がデパートの1階、2階よりリスクが高いということもなく、また最初の指摘では「従業員間の感染」リスクであり客の感染ではないといったことがあります。
デパ地下とロックフェスの特徴を並べてみると、
・デパ地下は屋内、対面、会話あり、行き帰りは電車が多い、都内だけで少なくとも100万人/日の集客
・ロックフェスは屋外、客は皆同じ方向を向いている、声出しは禁止、行き帰りは自家用車が多い(ただし県をまたぐ移動が多い)、1万人程度/日の集客
となりますので、やはりデパ地下の感染リスクは高く、ロックフェスはそれほどではないと考えられます。
ただし、どうしてもロックフェスは「不要不急」の最たるものという印象があり、またほとんど興味のない大多数にとっては開催の意味自体が感じられるものではありません。
しかし、この二つには大きな共通点があることを永井さんは最後に強調しています。
それは、「事業者側がきちんとリスク評価していない(もしくは明示していない)、ということが両者に共通する足りないモノなのです」
どうしてもデパ地下営業したい、ロックフェス開催したいというのなら、事業者が自らリスク調査と評価を行い、こうだからこう対策して開きたいと言うべきなのでしょうが、それが何もされていない。
政府や行政などに言われたら、その対策はやりましたというだけでは足りないということです。
これはもちろんデパ地下とロックフェスだけに限った話ではないでしょう。
専門的で難しいことではありますが、必要なことでしょう。