法務大臣からの諮問で法制委員会で「戸籍に読み仮名をつける」ことを検討することになったそうです。
もちろんその一番の理由は「デジタル化」(*)の都合でしょうが、それ以外にそこには非常に大きな問題が隠れています。
(*)諸般の事情から、国などの施策として使われる”デジタル化”という用語には「」をつける”カッコつけ”といたします。
それは法制委員会の中でも話し合われるようですが、「キラキラネーム」といった日本語の原則に合わない読み方について、どうするかでしょう。
現在の戸籍では、記載されるのは漢字、ひらがな、カタカナで、その読み方は書かれていません。
そのため、漢字をどのように読むかということは戸籍の管理下にはありません。
そこで、とんでもない読み方が横行するわけです。
なお、考えてみれば「漢字の読み」が定められていないだけでなく、「仮名の読み」も実は何も決まっていないことになります。
前から「太郎と書いて”はなこ”と読んでも良い」と言っていましたが、実は「”たろう”と書いて”はなこ”と読んでも良い」状態であることになります。
これについては、このブログでも何回か取り上げましたが、いわゆる「キラキラネーム」の範疇には入らないかもしれないものの、日本語の中で「漢字の読み方」の原則をはずれ(というか「わざと外す」)ている名前が多数付けられており、幼稚園や小学校で混乱している状況があるということです。
さて、それでは「戸籍に読み仮名をつける」ことがこの状態の解消につながるのか。
現在では新生児の出生届を出す際には、「有効な字が使われているか」ということは審査されるようです。
常用漢字と人名用漢字に定められているもの以外の漢字を届け出た場合には受理されず字の変更を迫られます。
もし「漢字の読み仮名」を届け出るようにする場合、「妥当な読み」かどうかを審査するのか。
「漢字の読み方」のような一覧表を作っておいて、それに載っていない読み方は拒絶するのか。
これをせずに、何が書いてあってもそのまま受理するのか。
非常に難しい問題だと思います。
そもそも、「標準的な漢字の読み方」なんていうものは、存在しないだろうし、これから決めるのも困難でしょう。
しかも時代によって漢字の読み方もどんどんと変化しています。
おそらく明治期の読みも現在とは異なっているでしょう。
さて、法制審議会はどのように結論を出すのか。
なお、法制審議会のメンバーがどのような人々なのか不明ですが、法学者だけでなく言語学者や歴史学者はいるのでしょうか。
法律屋だけで議論していたらまともな案は出ないようにも思いますが。
付け足し)現在の出生届受付の際の文字チェックでも、少し前になりますが「悪魔」という届を拒絶したということがありました。
これについても、出生届の審査になるのではという議論もあったように思います。
もしも、「読み方」審査などと言うことになれば相当な議論続出になるかもしれません。
「漢字読み方一覧」などと言う表を作って審査ということにしても、おそらく相当数の異議申し立て(某文書にこう読まれた例があるなど)が出るのではないかと思います。
かと言って、読み方審査なしに単に申請者の言われるままの読み方を登録するだけだとすると、その日本語破壊行為に行政がお墨付きを与えることにもなり兼ねません。