爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

トランプ問題続き、気候変動対策と脱炭素

トランプが就任早々次々と打ち出している政策、気候変動対策についてです。

 

これはちょっと問題で、他の政策のように頭から否定では済まないものがあり、部分的にはトランプの対応の方がまともと感じられるものも数多くあります。

メディアなどではこちらの方が大きな問題だと言われることも多いようですが、そう単純には捉えられません。

 

早くもパリ協定からの離脱を指示しました。

これも「えらいこっちゃ」という論調がほとんどですが、もともとパリ協定による温暖化ガス排出規制などというものの有効性などあるはずもないので、ここはトランプの方がマシというところでしょう。

 

ただし、トランプがそう言いだした背景というのは温暖化がどうこうより、アメリカのシェールガス・オイル生産が損なわれることが主であり、それにはとても賛同できるはずもないのですが。

しかしその理由の一つに彼が挙げている「脱炭素化がエネルギー価格の高騰を招きインフレになった」というのは一面の真実と言えるものであり、それを言わない論者は不親切と言えるかもしれません。

 

また「EV車への補助金政策の取りやめ」はまだ指令していないようですが、間もなく行われるのでしょう。

これは全く当然の話であり、何の効果もなくただただ資源とエネルギーの無駄使いに過ぎないものに金を注ぎ込むのは止めるべきでしょう。

 

とはいえ、そう示すだけでは良く分からないところなので解説を。

 

まず「気候変動対策」と「脱炭素化」そして「太陽光発電などの再生エネルギー転換」「EV車の推進」が全部組み合わされているのが当然のようになっていますが、その間には大きな溝があります。

「気候変動」はどうやら起きているのは間違いない。

しかしそこが「二酸化炭素濃度上昇」によるというのは一つの仮説であり、完全につながっているものではありません。

さらに「二酸化炭素濃度上昇」を「再生エネルギー推進」で止められるということは、まったく証明されていません。

ヨーロッパなどでは再生エネルギーが急速に伸びていると言われますが、それで化石燃料消費はほとんど削減されておらず、かえって消費が増加しています。

これは太陽光パネルなどの製造がすべて化石燃料を使って行われているからだけではなく、電力化率が低いためにその他の部門では逆に化石燃料に頼る状況であることも理由となります。

 

さらに、再生エネルギー化によりインフレが高進されたというのは一面の真実でしょう。(トランプの言うようにすべてそのせいというのは間違いでしょうが)

太陽光パネルの価格が下落し電力価格も下がっているなどと言われますが、多くの条件を無視した話であり、やはりその電力料金はかなり高いままでしょう。

そんなものに金を使うからインフレになるのだというのは間違いではありません。

 

EV車に至ってはすでに消費者がそのあまりにも不利益の多い使い勝手に離れつつあると報道されており、ガソリン車からの転換が本当に起きるかどうか、極めて疑問になっています。

その生産も中国に偏ってしまい、これ以上続けても中国を利するだけになりそうです。

これも関税を引き上げるだけでは止められないでしょう。

 

おそらくトランプの心の中の大きな部分を占めるであろう、アメリカ産の原油天然ガスの拡充については、かなりの危険性を含みます。

アメリカは原油生産では世界をリードしていた時期がありました。

まだ中東に大量の原油があるということが広まっていなかった第二次大戦以前の時期には、アメリカが世界の石油生産の多くを占めていました。

しかしその採掘量は徐々に低下していき、戦後になり中東の原油生産が次々と開始されるとアメリカ産の原油は競争性を失い生産を停止していきました。

そこには原油生産の特性が絡んできます。

油田には様々な炭化水素成分が混在しています。

ガソリンになるような低沸点炭化水素ばかりでなく、高沸点成分や天然ガスも混在していますが、それが地中の穴のような場所にあるのではなく、岩石の隙間にしみ込んでいます。

油田採掘の最初には低沸点成分が圧力を持って噴出してきます。

それが徐々に減っていき最後にはポンプで汲み上げなければ出てこなくなります。

そういった高沸点成分の多い原油は低品質と捉えられていました。

アメリカの油田はそういったものばかりとなり、いったんは放棄されました。

しかし残存している炭化水素はまだ相当量あり、それが原油価格高騰となったために採掘可能となってきたのが「シェールオイル・ガス」というものです。

ただし、それを出すためには高温高圧水蒸気や薬品を油田に送り込み、油分やガスを溶かし出す必要があります。

そのコストもかかりますし、環境破壊にもつながるという問題を抱えています。

さらに「残りかすであり、それほど大量にあるはずもない」というのが事実でしょう。

つまり、トランプが調子に乗って増産増産と言ってもかえって「枯渇を早める」だけになる危険性もあります。

とはいえ、まだしばらくは無くなるはずもなく、まあトランプの命がある間は十分に採掘できるでしょう。

 

このような状況で、トランプは二酸化炭素排出制限などには背を向け、残存しているアメリカ産原油ガスの増産をしてエネルギー価格の抑制を始め、インフレを抑えることも目指すということでしょう。

それが果たしてどのような結果を生むのか。

二酸化炭素排出増加といってもそれが何かの影響を出すことはあり得ません。

それとは関係なしにおそらくまた巨大ハリケーンアメリカを襲うでしょうが、それをトランプ政策のせいだと攻撃する人々は出てもそれは真実ではありません。

太陽光パネル、蓄電池、EV車への支出は激減するかもしれません。

それで誰が得をし誰が損をするか。

そういったものの製造はほとんど中国ですので、中国製品は売れなくなりさらに中国の経済状況は悪くなるでしょう。

それが中国の社会状況を悪化させ、さらに危険性を増すかもしれません。

台湾併合の目論見に出るか。

アメリカのエネルギー価格は若干は低下するかも。

しかしその他の条件がひどすぎるためにインフレはさほど改善されないでしょう。

つまり、この分野でのトランプ政策は社会や世界情勢に大きな影響を及ぼすものの、成功はしないと考えられます。