富士山の噴火ではこれまでは江戸時代の宝永噴火のような火山灰噴出の被害をもっぱら想定していただけでしたが、それだけではないと溶岩流の広範囲な流出も予測したことで、周辺の自治体などがあたふたしているようです。
www.kanaloco.jp神奈川新聞の報道ですが、これまでの被害想定では神奈川などには大量の火山灰が降るという予測はされていたものの、溶岩流が到達するとはまったく触れられていなかったのが、一転して?それに言及されたことであわてている様子が分かります。
しかし、こんなことは火山学者の中では常識だったはずです。
それをあたかも火山灰以外は無いかのような被害想定がなぜ出されているのか、これまでも不思議に感じていました。
確かにもっとも新しい時代の噴火は宝永年間のものですので、その噴火状況を参考にはしやすいのでしょうが、富士山の噴火形態は非常にバラエティに富んでおり、その被害も様々なものです。
以下の都司さんの本でもこれまでの富士山の噴火の状況が紹介されていました。
sohujojo.hatenablog.com特に大きいのは、平安時代の貞観噴火ですが、この時の溶岩の上にできたのが青木ヶ原樹海だというのも有名なことだと思っていましたが、それほど有名でもないのでしょうか。
平安時代などは古代だと思っている人も多いのかもしれまえんが、地質時代の感覚から言えば「ほんの少し前」、富士山の大噴火という観点から見れば「宝永の一つ前」
そのような近い時代の噴火で溶岩の大量流出があったのに、これまで忘れたかのように振る舞っていたこと自体、おかしな態度だったということでしょう。
なお、貞観という年号には他のところで見覚えがあるかもしれませんが、東北地方に巨大津波をもたらした貞観地震も起きた時代です。
その教訓を忘れ去ってしまったために原発事故も起きたと言えます。
富士山大噴火も忘れないようにしたいものです。
富士山が日本列島の真ん中に堂々とそびえているために古くからあるような感覚もあるのかもしれませんが、その歴史は非常に新しいもので、土台となった一番古い山体でも数十万年程度、その上に3000m程度まで成長した古富士は1万5000年前までに成立、さらにその上に積み重なった新富士はその後という、人間の歴史時代とも重なる程度の新しいものですので、まだまだ火山噴火の形式も様々でどういった現象が起きるかも分からないようです。
これまでの噴火の歴史を調べるというのも重要ですが、この次に起きる噴火がそれと同じようなものだとは全く言えないものでしょう。
しかし、この最近の平穏に見える動きは、決して火山活動が収まっているのではなく、マグマを貯め続けていると考えることが必要なのでしょう。