外国人観光客の制限解除で多くの人々が日本を訪れていますが、中でも富士山登山の人気は相当なもののようです。
ただしその準備や装備はお粗末なもののようで、テレビで繰り返し報道されていますが半袖半ズボンで山頂まで登ろうとするなど危険極まりないようです。
さて、その富士山も決して活動が停止しているわけではなく、噴火の危険性もかなり高い火山です。
一応、国や自治体もその被害想定などというものを出していますが、前回の江戸時代の宝永噴火が火山灰噴出主体であったためにその被害ばかりが想定され、他の噴火被害が考えられていないように見えることについては何度か書いてきました。
ようやく溶岩流の危険性も出されたことがありましたが、まだまだ不十分でしょう。
こういった富士山の噴火の歴史について、地元富士市ではさすがにきちんとまとめられていました。
これによると、富士山の歴史は約70万年前に始まるのですが、10万年前くらいから大きな活動期に入りました。
これを古富士火山というそうですが、この時期の噴火は爆発的噴火で大量の溶岩、火山灰、スコリアを噴出し現在のような3000m以上にまで積みあがりました。
11000年前位から噴火の形態が変わり、溶岩流出が主体となり断続的に大量の溶岩を広げています。
その後4000年ほどは平穏だったのですが、5000年前位から新たな活動状態になりました。
これを新富士火山と言います。
この噴火では様々な形態が見られ、「噴火のデパート」などと呼ばれることもあるとか。
溶岩流、火山灰、スコリア、火砕流、山体崩壊、側火山噴火など何でもありの状態です。
3000年前に大量のスコリア噴出の爆発的噴火。
2300年前に大規模な山体崩壊が発生し御殿場泥流が駿河湾まで埋め尽くす。
延暦大噴火(800年)山頂からの溶岩流出、火山灰
貞観大噴火(864-866)大量の溶岩流出
宝永大噴火(1707年)大量のスコリアと火山灰噴出
このように噴火のタイプは様々で、まさに何でもあり得るという状態です。
このように頻繁に大噴火が起きている火山だとは言え、有史時代で記録も残っているとなると800年の延暦噴火以降ということになってしまいます。
しかし有史以前の縄文時代とはいえ、2300年前の噴火の「大規模な山体崩壊」というのが注目すべき点です。
火山では繰り返し起きる噴火でそれまでに積み重なってきた山体が崩壊してしまうという事態がしばしば発生します。
1980年のアメリカのセントヘレンズ山の噴火に伴う山体崩壊というのが有名ですが、日本でも1888年の磐梯山噴火での山体崩壊が起きています。
また1792年の島原半島雲仙岳側火山の眉山の崩壊とそれに伴う津波での肥後の被災も忘れられません。
富士山も噴火により積もった成層火山ですのでその地質は脆く噴火の際に大規模崩壊ということも十分にあり得るところです。
ただしその場合の被害の様相というものは全く想像もできません。
どちらの方向に向くかによっても大きく異なりますし規模も想定は難しいでしょう。
しかし放っておくわけにもいかないことです。
昔の噴火の通りになるはずもないのですが、その状況は詳しく調べるべきでしょう。
なお、もしも山体崩壊し頂上も無くなるほどになれば、「日本一の山」でなくなる可能性も十分にあり、またその景観も大きく変わるでしょう。
そうなれば、外国人観光客の集中もなくなるかもしれませんが。