八代市立博物館未来の森ミュージアムの冬季特別展覧会、「お姫様の婚礼道具」を見てきました。
八代は江戸幕府の「一国一城令」つまり一つの国には城は一つだけという布告の全国でも数少ない例外で、熊本城以外に肥後国でもう一つの城、八代城が存在していたところでした。
その八代城を預かっていたのが、家老の松井家でした。
家老の家柄とは言え、その家格は高く子女の通婚先も各国の家老だけでなく小藩の大名家も含まれていたようです。
その松井家に関わる婚礼道具を展示されているのが、今回の八代市立博物館冬季特別展覧会でした。
出品されている品物はいずれも19世紀のものですが、3つのグループに分かれ、パンフレット表紙にもなっている豪華な貝桶を含む七宝折崩桐紋蒔絵婚礼道具(誰の婚礼かは不明)、松井家10代章之の息女が細川家重臣沢村家に嫁いだときのもの、そして松井家10代章之に嫁いできた谷田部細川家(常陸国1万6千石)の息女琴の持参したものです。
どれも漆塗りの手箱などに入念に貝細工や金銀細工で装飾を施したもので、入念に作られた最高級品ということが、素人目にも分かるものでした。
なお、「貝桶」とは貝合せという遊戯に用いる貝(美しい絵を描いたハマグリの貝殻)を一組収めた容れ物ですが、婚礼道具の象徴とも言えるもので婚礼の際には行列の先頭で新婦側の重臣がつとめる「貝桶奉行」という役割の人が付き添って歩いたそうです。
写真では分かりづらいのですが、かなり大きなものでその細工も念入りのようでした。
肥後藩の家老職とはいえ、繁栄する八代商人を司った松井家にふさわしいものと言えるでしょう。