私も高校生大学生であった1970年代にはよくSF小説を読んだのですが、それから就職、結婚と続いたので80年代にはあまりSF(というか、どういった本であっても)を読む機会が無くなりました。
だからというわけでもないのですが、こういったアンソロジーでも読んで一度でその時代を概観してやろうということです。
本書は出版は1992年、80年代が終わってすぐに選んでしまったようです。
編者の小川さん、山岸さんという方々については良く知りませんが、作家というわけではないようです。
内容はすべて海外のもので、80年代初頭には取り上げた作家たちも皆無名であったということです。
アメリカでも80年代はSFがブームとなった時代であり、彼らも一気に有名になり活躍しました。
とはいえ、私が知っていた名前はゼラズニイだけですが。
80年代というのは、実世界の科学技術も大きく飛躍した時代と言えるでしょう。
バイオテクノロジーも急速に進歩し、またインターネットが形が見えだしたと言えるかもしれません。
そのせいか、収録された作品にもそういった科学が取り入れられることが多いようです。
それ以前の時代のSFと比べると、色合いがかなり変わって感じられるようになりました。
個々の作品については取り上げませんが、一つだけ面白い部分を紹介しておきます。
火星に駐在している若者が音楽を演奏し、それが地球でもヒットするというアレン・M・スティールの「マース・ホテルから生中継で」という作品ですが、状況は非常にSF的ですが、その中で演奏した音楽を「LPを再プレスし」「CDが大ヒット」だそうです。
まさか、演奏曲がデジタル配信されるようになるとは予測できなかったのでしょう。