本を読んでの感想文なんですが、「読書」ではなく「瀆書」つまり「本を冒瀆する」ということで、かなり捻ったものとなっています。
発表されていたのは、1970年代のSFブーム(と言われていた)頃に発売された「奇想天外」という雑誌で、そこに3年ほどにわたって連載されていたそうです。
本書はその連載が終わってからまとめて単行本とされたものです。
著者の筒井康隆さんは言わずと知れたSF界の大物ですが、当時はまだ壮年、暴れまわっていた年代の頃です。
とは言っても、取り上げられている本はSF関係ばかりではなく様々なジャンルのものを含んでいます。
しかし全くかけ離れたような本は無く、筒井さんが書いていた本に関係するところが少しあるのかなというものでもあるようです。
なお、読者はやはり奇想天外誌の対象層を想定しているようで、青年、だいたい男子、SF好きといった人々を考えていたのでしょうか、語り口も砕けた様子です。
SF関係ばかりではないと言いましたが、やはりかなりSF作家が書いた作品も多く、その中には当時筒井さんが親しくしていた同輩後輩も含まれており、中には本が売れずに苦労していた人もあり、その書き方にも筒井さんの心情が感じられるものもあります。
また、江戸川乱歩の全集紹介の項では、筒井さんがデビュー当時に乱歩に励まされたという思い出なども盛り込まれ、中身の濃いものとなっています。
中には容赦のない批判が書かれている本もあり、それはそれで面白いものです。