環境問題として取り上げられてきた多くの問題はその真の危険性を遥かに超えるような虚像を与えられて、その対策に巨額の費用をかけてしまったという愚行をもたらしました。
それらの幻がまだ猛威を振るっていた2005年に反二酸化炭素温暖化で有名な渡辺正さん(当時東大教授、現在は東京理科大に移られているようです)が素人向けに書かれたのがこの本です。
槍玉に上げられているのは、酸性雨、地球温暖化、ダイオキシン、環境ホルモンで、これらの実際には危険性が微々たるものであるものに目を向けさせられた隙に、本当に人類に危険を及ぼしている三悪(アルコール、タバコ、車)は相も変わらずのさばっているということです。
しかし、この本出版後10年以上を経た現在でも、論破された虚像はそのままのようですし、本当の危険には全く手がつけられないままのようです。
細かい主張は取り上げませんが、これらの環境問題が出てきた背景については書いておきましょう。
科学技術の発展と産業発達に伴い、確かに近い過去には環境が非常に悪化した時代がありました。
著者はそれは1965年ごろから85年ころまでであり、その期間には「本物の環境汚染と被害があった」としています。
しかし、85年から本書執筆の2005年までの次の20年間には環境技術が進歩し浄化が進んでしまいました。
そこで困ったのが環境分野の官僚、技術者、業者等々です。彼らが自分たちの立場を守るために次々と些細な問題を針小棒大に取り上げてきたのが、最近の環境問題であると喝破しています。
確かに、そんなもんでしょう。特に環境官僚と環境科学者の鉄壁のスクラムというのはひどいものです。
本当の危険を少しでも減らして行く、それが大切だということは、現在さらに大きな問題と化しているようです。