爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「遺伝子改造社会 あなたはどうする」池田清彦、金森修著

ゲノム編集と言うことがここ数年急激に発展しているようですが、この本は2001年出版でありながらこういった事態を予測しそうなったらどうなるかということを取り上げています。

池田さんは有名な?生物学者で、金森さんは哲学出身の科学史専攻の方です。

このお二人が遺伝子改変という技術の発展に社会はどう向かっていくのかということを対談しています。

したがって、まだ技術としては広がっていない時代にそこを考えているため若干の現実との相違はあるのかもしれませんが、考え方としては間違いはないでしょう。

 

遺伝子による遺伝制御ということは、今でもまだはっきりとはしていませんが、その辺の解説から始められています。

たとえば、「行動を支配する遺伝子など無い」とか、「犯罪遺伝子など存在しない」といったもので、ともすれば間違いやすい一般人の思考に釘を差します。

 

ただし、病気についてはこれまでの知識でもある程度は分かってきており、特有の遺伝病などは原因遺伝子がはっきりしているものもあります。

たとえば、胎児の遺伝子診断を行ないこういった発病遺伝子があったら選択的中絶をするのかどうか、これは非常に大きな問題になってきます。

 

しかし、「遺伝子改造」と言った場合は、このような明白な発病に留まらず、たとえば「身長を高くする」とか「美人にする」とか「頭を良くする」といった方向に向かう可能性が出てきます。

現状ではそのようなことは不可能ですが、いつまでも不可能なままではないでしょう。

必ずそれに近づくための努力がなされ、いつかは実現すると考えるべきなのでしょう。

 

それは「やってはいけない」ことなのか、それもよく分かりません。さらになぜ「やってはいけない」のか、「危険が伴うから」か、「天に挑む」からか。

 

もしかしたら、遺伝子改造から発生、分娩まですべて政府が都合の良いようにやってしまう時代が来るかもしれません。

まあ、怖ろしい時代がやって来るということなんでしょうか。

 

なお、現在の遺伝子操作植物(GMO)についても触れています。

これらは健康被害が疑われるとして反発されることが多いのですが、池田さんによればそれは大した問題ではないということ。しかし、環境改変と言う問題がより大きくなるだろうということです。

例えば現在、除草剤耐性遺伝子で組み替えた大豆などが広く使われていますが、この遺伝子が雑草に取り込まれたらどうなるか。

別の除草剤耐性遺伝子を作って組み替えるか。結局これまでの抗生物質と耐性菌の戦いを繰り返すだけになるだろうということです。

そうでしょうね。