国語辞書の編纂に注力した見坊豪紀さんのことは本で読みました。
「辞書になった男 ケンボー先生と山田先生」佐々木健一著 - 爽風上々のブログ
この本は見坊さんの後任、「三国」三省堂国語辞典の現在の編纂者の飯間さんが、日本語の様々な言葉の用例を蒐集し、その中で実際には辞書には載らなかった言葉を解説しているというものです。
見坊さんは実に生涯で145万語の用例を集めたそうですが、飯間さんもそこまでは行かずとも1万数千語の用例を拾い集めているそうです。
その中で実際に辞書に載るのはごくわずか、それではちょっともったいないと思ったのでしょうか。
なお、見坊さんもそういった不採用語の辞典というものを著していますが、それはただ用例を並べてあるだけで見づらかったようで、この本では十分に解説も施したということです。
色々な種類の不採用語がありますが、それらを「まだ定着していない」「ユーモアがある」「バラエティーに富む」「方言あるいは方言風」「行けると思ったのに最後に落選」と分けてまとめています。
俗語でなかなか掲載しにくいものの中には「ガチな」というものもありました。
これはかなり広がっておりその内には載せられるのでしょうか。
もともとは相撲界の隠語で真剣勝負のことを「ガチンコ」といったということはかなり知られていることでしょう。
「現代用語の基礎知識」にはすでに2001年版から載っています。
現在でも複合語を作るなど広がりはさらに増しています。
「ガチ泣き」「ガチ疲れた」等々、さらに意味の展開は広がりそうです。
最近の学生用語には「メシ友」というのがあるそうです。
今の学生は一人で食事をしていることを恥ずかしいもののように感じているようです。
一人ぼっちで食べることを「ぼっち飯」などということもあるようです。
そのために、「食事を一緒にするだけの友」を「メシ友」というそうです。
著者の飯間さんは1967年生まれということで、現在50代ですが、自分の学生時代にはほとんど学食で一人で食べていてそういう人は珍しくもなかったそうです。
私自身も飯間さんより10数年年長ですが、学生時代にはほとんど一人でした。
それで別に何とも感じていなかったのですが、相当その辺の感覚が変わってきたようです。
「手出し」といえば、普通は「余計な手出しはするな」といった意味で使われるのでしょうか。
しかし九州ではこれは「自腹で負担する」ことを表します。
記念碑の費用はメンバーの手出しで賄った。といった具合に使います。
全国版ならこれは「負担」と書くのでしょうが、どうやら九州人はこれが方言であるとは意識せずに使っているようです。
私も普通に「手出し」と言いますので、もうどっぷりと九州方言に浸かり切っているようです。
九州方言でも熊本特有なのが「あとぜき」です。
これは時々テレビでも取り上げられることもあるので、ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、「後塞」すなわち、あとを塞く、後を閉めるということです。
出入り口などに書いてあり、開けたら閉めろということを表します。
熊本人はこれが方言だということをあまり意識していないのも確かなようです。
ということで、「あとぜき」も「手出し」も三国には載っていないとのことです。