寓話といえばイソップや荘子、インドの仏教関連のものなど多数ありますが、いずれも人物や動物を登場させてその中に様々な教訓などを入れ、聞く人に分かりやすく伝えようとしたものです。
この本はそのような古今東西の寓話を集め、さらに解説を加えており、著者の意図としてはこれを「学校の授業」や「会社の朝礼」の際に使えるようにということです。
そのため、章ごとにある程度まとまった題材を選んでおり、例えば第1章は「視点と視野と視座」第2章は「幅広い認識としなやかな思考」といった具合で、選びやすいように作っています。
誰もが知っているような有名な寓話も取り上げられており、イソップの「アリとセミ」は第1章に、同じく「北風と太陽」は第3章に、日本民話の「三年寝太郎」は第13章に採られています。
あまり知らなかった寓話もあり、仏教寓話の中から「天国と地獄の長い箸」というものもありました。
天国も地獄も食堂に美味しそうな料理が並んでいるのは同様なのですが、どちらも食べる時は非常に長い箸で食べなければならないのです。
地獄では皆がその長い箸で自分で食事を取って自分の口に入れようとするのですが、長すぎて入らず、隣の人とぶつかって喧嘩になります。
しかし天国では皆が自分の箸で取った食事を向かいの人に相互に食べさせることで、見なが食べられているということです。
教訓としては、奪い合うから足りなくなる、他人の事を尊重するといったものです。
こういった教訓めいた話は直接ではとても聞く気にもなれないでしょうから、寓話という形にしたのでしょうが、古代から人間の心理は変わっていないということでしょう。