爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「『英語が読める』の9割は誤読」越前敏弥著

著者の越前さんは翻訳家として文芸作品を手掛けるかたわら、翻訳家志望の人々に翻訳講座で教えています。

翻訳家を志すほどの人々でも間違えやすいという場合があり、それはかなりの英語力があっても引っかかりやすい罠のようなものです。

 

そのような、実際に翻訳講座の生徒さんたちが犯しやすい誤りや、訳しにくい英語表現、そして翻訳家として活動してきた中で特に印象的な事例などを説明します。

 

一見やさしそうな英文でもほとんどの人が間違えるというのが次の例です。

Kathy was married with a young boy in the forties.

これを多くの人は「キャシーは40代で若い男と結婚した」と訳します。

しかし、marryという動詞は自動詞であり、「と結婚する」という意味で使う場合には前置詞は伴いません。

したがって、もしもその文章を英訳するなら「Kathy married a young boy in her forties.」とならなければいけません。

 

この文章の訳は「40年代にはキャシーは結婚していて、男の子が一人いた」です。

 

英文和訳の際に考えるべきことは、「英文でも左から右に読んでいく」ということです。

その原則で前半を見ると、Kathy was married. は「結婚した」ではなく「結婚していた」となります。

その次の部分、「with a young boy」は結婚の相手を言っているのではなく、「幼い男の子を伴っていた」となります。

さらに、「40代」は「in her forties」であり、「in the forties」ならば「40年代」つまり「1940年代」とならなければならないということです。

 

英語の単語には通常使う意味とは異なる思いもよらない意味がある場合があります。

自分の知っている意味で訳していって何かおかしいなという違和感を感じる場合がかなり多いはずです。

「自分が持っている知識などたかが知れていると自覚し、常に調べることを怠らないこと」が必要だということです。

between という単語は通常は「の間に」という意味と捉えています。

しかし、Amanda is between boyfriends. という文章の場合、「アマンダはボーイフレンド二人の間にいる」と訳しても間違いはないのですが、違う意味で使われる場合があります。

between は空間的な「あいだ」を指すことが多いのですが、それ以外に「時間的な”あいだ”」にも使われるということが結構あるようです。

つまりこの文章の場合、ボーイフレンドがいなくなって、次のボーイフレンドが現れるまでの間であること、すなわちボーイフレンド募集中だという意味があるということです。

 

こういった誤読・誤訳を防ぐための心得というものをまとめてありました。

・原則として左から右によみ、予想から確認、予想‐修正‐確認のプロセスに意識を向ける。

・「形の違和感」「意味の違和感」を察知するアンテナを敏感にする。

・自分の弱点である文法事項を知りその部分を強化する。

特に日本語話者が弱い文法項目は次の7つ。「否定」「冠詞と複数・単数の区別」「カンマやand、orでの言葉の並び」「比較」「仮定法」「接続詞と関係詞」「数に関する表現」

 

office と言うとあまりにも「事務所」という訳の意識が強くなるためか、それ以外の意味の可能性をあまり考えないようです。

この単語には事務所という意味の他に「職務」「任務」という意味もありその使用例もかなり多いようです。

英米の大学院などへの進学の際に提出する出願書類に、「office held」という欄があることが多いのですが、例えば「課外活動」を記入する欄にこれが書かれていると、そこにはその活動での役職を書かねばならないところ、日本人の多くは「学校の所在地」を書いてしまうということです。

 

いやはや、自分も生半可な知識しか持っていないものだと改めて痛感してしまいました。