魯迅に「集外集」というものがあり、その作品は新聞・雑誌に掲載されてもすぐに集められて出版されるのですが、中には漏れていたものがあり、それを集めて一巻とした書物が「集外集」だったそうです。
それにならい、陳舜臣さんも短篇で雑誌に発表したものの単行本には収録していなかったものがあり、それをまとめてこの本としたそうです。
そのため、掲載年月にもかなりの幅があり、一番古いものは1961年光文社の「宝石」に発表した「狂生員」、一番新しいものは1994年講談社の「小説現代」に掲載された「梅福伝」となっています。
副題に「中国歴史小説」となってはいますが、新しいところでは戦後の神戸に住む中国人華僑も扱われています。
もちろん、その登場人物は中国歴史上の事件に関わっているのではありますが。
その登場人物は、古い所では前漢の梅福から現代史とも言うべき国共内戦のころの范将軍の部下であった尤宗信まで、すべて歴史上の実在の人物のようですが、これまでまったく名前も聞いたことのない人ばかりです。
中国では名を知られているのでしょうか。
陳舜臣さんは日本生まれですが、家庭で中国の歴史などは教育を受けていたということですので、日本人の中国についての知識とは大きな差があったのかもしれません。
そのようなそこまで有名ではない歴史上の人物たちですが、それぞれが小説の主人公になり得る生涯を送っているということがよく分かります。
中国の奥の深さというものはこのような人間が織りなしているのでしょう。
それぞれの小説については、ごく短い短篇なので紹介していくと完全にあらすじを明らかにするようなものなので、遠慮しておきます。