日本の国債などの発行額は世界でも突出しており、財政の危機だということは言われ続けています。
しかし、その割には破綻の様子も見せないままのため、逆に「いくら国債が増えても大丈夫」などと言うことを言いだす連中も出てくる始末です。
そんな中、新型コロナウイルスの流行で産業界も打撃を受け国民の多くが困窮するため、多額の財政出動が必要と言うことになり、その財源は国債しかなくさらに発行額を増やそうとしています。
このまま国債が増え続けて行って本当に大丈夫なのか、それともどこかに限界点があるのか。
こういった点について、著者の伊藤さんは財政が専門では無いということですが、マクロ経済学の中でも国際金融や金融政策を専門としてきたということで、隣接分野から見た日本財政について書こうと、2014年に安倍政権となりアベノミクスがスタートした時点で執筆したということです。
そのため、2014年での数字が最新のものであり、日本国債の保有者も最大のものは銀行で国債の38%、生損保が22.6%で日本銀行の18.7%をはるかに上回るものでした。
これが、日本がギリシャと異なり国債が増加しても破綻につながらない理由とされていたのですが、これは今年の数字では日本銀行保有率が48%と半数に迫るものとなってしまいました。
国債を中央銀行がそのまま保有することはできないのですが、市中の国債を日銀が買い取ることでどんどんと保有率を上げてしまったということでこうなりました。
これが本書執筆時と現在の大きな違いとなっており、また別の状況になっているようです。
本書の中でも、日銀の国債保有が過剰となった場合についても触れてありますが、これはやはりハイパーインフレにつながるだろうと予測されています。
それは、国債の償還に使われた資金は市中銀行でそのまま保持されることはなく、実物資産や外貨資産の購入に当てられ、それがインフレにつながるということですが、これも現状とは異なるようです。
まあ、現状がどうなのかをその時点で予測は難しかったでしょうが、それを考えると本書の価値をかなり減じることになるのはやむを得ないでしょう。
それでも一応、本書内容を略記しておきます。
第1章 このままでは日本は破産する
第2章 突出して膨らむ日本の借金
第3章 危機のシグナル
第4章 少子高齢化の財政への影響
第5章 日本の債務はどこまで維持可能か
第6章 今後の財政政策を考える
やはり増税と景気回復による税収アップがどういう関係になるのかというのが論点の主要な部分だと思います。
それが、コロナ禍というとんでもない窮状により大きく影響されました。
ちょうど、財務省幹部がバラマキ批判をするというニュースも出ていますが、やはりバラマキはやることになるのでしょう。
財政が本当に大丈夫なのかどうか、さらに緊迫した状況になっているということでしょう。