初版からは24年、第3版出版からも12年がたち、内容も古びたということで、2013年に第4版として出版されたものです。
日本の経済について、多くの面から見る必要があると思いますが、それをできるだけ幅広く、さらに項目ごとにグラフや表を使って分かり易く見せるということを狙って書かれています。
まあそういったあまりにも広い対象を相手に、新書版で200ページほどの本ですから、1項に当てられるページは見開きの2ページ、文章1ページで図表1ページ。
かなり絞った内容となっています。
というわけで、初心者やちょっと慣れた人が手元に置いて忘れかけた数字などを確かめる用途向けということでしょう。
深く調べたい人は別の本を探した方が良さそうです。
なお、著者筆頭の宮崎さんは大和総研理事長から政府の経済企画庁長官も務め、他のお二方も大和総研関係ですので、まあだいたい「体制側からの見方」そのものかと思います。
それが嫌な方にもおすすめはできません。
全10章にまとめられています。
Ⅰ経済発展の軌跡
Ⅱ人口・国土・環境・国富
Ⅲ食生活と第一次産業
Ⅴ雇用・労働
Ⅵ金融・資本市場
Ⅶ財政
Ⅷ国際収支
Ⅸ国民生活
Ⅹ日本経済の展望
それぞれの内容はまったく関係がありませんので、どこから見ても見なくても大丈夫だそうです。
「日本の貯蓄」より
かつては世界的に見ても非常に高い貯蓄率であった日本ですが、最近は低下していると言われています。
しかしここまで低いとは。
家計貯蓄率は高度成長期には15%に達し、それが企業の資金調達にも関係していましたが、90年代以降急激に低下し、2005年以降はアメリカより低いようです。
貯蓄率は高いから良いとも言えませんが、あまり低いのは厳しいことでしょう。
「財政政策」より
赤字国債は戦時中の国債日銀引き受けがインフレの要因となったということで、戦後は赤字国債の日銀新規発行は認められていない。
ということです。
しかし、これを見事に崩してしまった現在は大丈夫なんでしょうか。
各章末には、その章をまとめた人が最後に「ここでひとこと」と言う文章を1ページ書いています。
第8章「国際収支」の最後には、次のように書かれています。
「20世紀は栄光と悲惨の世紀であった。悲惨とは戦争と言う最大の不幸を含めて。
悲惨がもたらされたのは、国際的にみると協調に欠け無節操な経済競争がつづいたからである。
軍事力を動員して権益を守り、対象となった国は苦し紛れに暴力行為で抵抗した。」
21世紀になっても状況はまったく良くはなっていないようです。
戦争は経済から来る。