映画にはだいたい物を食べる場面があり、それが映画を見る楽しみの一つにもなっています。
この本は数多くの名画の中で魅力を振りまいていた食べ物や食事の場面を取り上げてやろうというものです。
こういった本を書くのは映画評論が専門の人が多いのですが、本書著者は食品会社で新製品開発などを担当してきた食のプロで、海外赴任も数多くあちこちで料理や食材に触れる機会も多かったということです。
そこで「映画と食のステキな関係」を本にしてみようという趣旨で書かれました。
取り上げられた映画は世界各国の名画、日本の映画も含まれています。
ただし、食というものが中心となっている映画はそれほど含まれず、一般的な名画というものが選ばれているようです。
中には確かに口から入るものではあっても、それほど料理とは言えないようなものもあり、黒澤明の「用心棒」では「水」、「青い山脈」では「リンゴ」、中国映画「山の郵便配達」では「焼きトウモロコシ」と、何か無理やり食物を選び出したような印象もありますが、これもその映画の中では特に目に焼き付くような場面なのでしょう。
唯一、料理がメインテーマの映画としては「バベットの晩餐会」がありました。
デンマークの寒村の老姉妹のもとにパリからバベットという女性がやってきて、姉妹の亡き父親の生誕100年を祝う晩餐会のために料理を作るという話なのですが、さすがにそこの記述は細かいものとなっています。
なお、私は映画はあまり見る方ではなく、この本で取り上げられている63作のうち見たことがあるのは「ローマの休日」「雨に唄えば」「サウンド・オブ・ミュージック」など5本程度でした。(しかもテレビで)
それでも噂にだけは聞いている名作の数々ですので、まあ目に見えるかのように感じることはできました。
好きなことをやって、本まで書いてしまうというのは幸せな人生と言うべきでしょう。