インドで変異したと言われるコロナウイルス変異株、デルタ株というのが感染力が非常に強いということで、流行のウイルス株がどんどんデルタに置き換わっているということです。
このため、日本では爆発的感染増加が起きそうな状況ですが、いったんはほぼ制圧したと言われる中国でも再びの感染拡大が懸念されているようです。
このデルタ株は感染力が非常に強くなったということが言われていますが、重症化などの病原性については強くなったという報告もあるものの、まだ分からないようです。
ウイルスでは増殖の際の遺伝子の変異を起こす確率が非常に高いため、どんどんと変異が進むのは当然です。
インフルエンザでもAとかBとか言った変異型がたくさんあることはお判りでしょうし、ワクチンも効かなくなる変異株があるということも知られています。
新型コロナウイルスの場合は今のところまだワクチンが効かなくなるというところまでの変異では無いようですが、心配されるところです。
さて、遺伝子増殖の際の変異発生というものは狙って起こるものではなく偶然、様々な種類の変異が起きます。
そのほとんどはウイルス自体の生存にマイナスのもので、増殖もできずに消えてしまうものがほとんどでしょう。
しかし、その無数の変異株の中にたまたまプラスの方向になる変異をしてしまうものが出てきます。
それがもしも「感染力増強」という方向に起きれば、ウイルスにとっては強力なパワーを持ったようなものです。
この「感染力増強」というのは、一つの性質ではなく多くの性質が重なったものです。
したがって、感染力増強変異株といっても多くの性質を持ち、その中でもっともすぐれている者が残るのでしょう。
さて、「変異株の毒性が強くなるか」という問題です。
実は、感染力増強と毒性強化とは関係が無いと考えられます。
したがって、もしも毒性強化の変異株が見つかったとすれば、それは感染力増強した変異株にさらに毒性強化の変異が重なったということでしょう。
そう言うことが無いとは言えませんが、変異株だから恐ろしいということも言えません。
今までの多くのウイルスでは、変異を繰り返して感染力は増強される一方、毒性は弱くなるという変異の方向性が見られます。
これはウイルス流行のパターンを考えれば分かることで、もしも強毒化し感染者がすぐに重症化して死亡してしまえば、ウイルスの増殖にはマイナスに作用します。
弱毒化し感染してもその感染者の活動がほとんど制限されないほどであれば、どんどんと感染が広がることになります。(ただし、せいぜい鼻水が出る程度の”ただの風邪”)
その方がウイルス変異株の増殖にとっては有利であり、その方向に変異したウイルス株の方が遺伝競争で勝者となるわけです。
実際に、現在の「ただの風邪」を引き起こすウイルスはこのような変異の道をたどってきたのではないでしょうか。
この新型コロナウイルスもやがてはこの方向に進化していき、人間とそこそこ平和な関係になると思いますが、それがいつになるか。
そこまで社会が持つかどうかの不安が強そうです。