爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「昔ばなし あの世とこの世を結ぶ物語」古川のり子著

「桃太郎」や「花坂爺さん」といった昔ばなしは、全国各地で少しずつ形を変えながら語り伝えられてきました。

その内容は中には古事記日本書紀といった古代の神話に原点があるものもあり、この世とあの世、当時の世界観といったものが残っているものもあります。

 

この本では、代表的な昔ばなしのどこにそういった古代の世界観が残っているか、学術的な解析で説明されています。

 

まずは「桃太郎」

桃太郎が桃から生まれたことになっていますが、古代中国に源流を持つ「桃信仰」というものが影響しています。

中国では崑崙山の西王母が持つ仙果が桃だということになっています。

桃は生命力の象徴であり、女性の生殖力と結びついていました。

 

犬、猿、雉の従者たちも、それぞれ古代から非常に人々と結びついていた動物から選ばれています。

犬は古事記の神話でもあの世からこの世へヤマトタケルと導いたとされています。

彼らに与えたのが「キビ団子」ですが、これも出産時や結婚時に食べることでその家と結び付けられる「産飯」という風習の意味が共通しているものです。

犬・猿・雉のように人間と深い関係にある動物とは言え、野生を取り戻すことが無いとは言えません。

彼らを忠実な家来として使うためにもキビ団子という「この世の飯」を食べされるということが呪術的な意味があったようです。

 

その他の昔ばなしにも、それぞれ古代から続く呪術的な内容が残っているようです。

伝えられてくる中で徐々に元の意味は忘れられたのでしょうが、延々と続いているものだということでしょう。