爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「傑物が変えた世界史 上」アラン・ドゥコー著

歴史と言うものは大きな流れというものはあるものの、変革の時には並はずれた個人の働きが作用することもあります。

その意味では「傑物が変えた」ということもあるのかもしれません。

 

この本は歴史家でテレビプロデュ―サーでもあるという、フランス人のドゥコー氏が主にヨーロッパ周辺の目覚ましい人物の伝記を並べたものです。

 

ただし、「傑物」というと日本語ではプラスの意味しかないと思うのですが、取り上げられた人物たちは、ドラキュラ伯爵のモデルであったルーマニアのワラキア公ヴラド三世、ルイ15世時代のフランスの盗賊マンドラン、エジプトのヒエログリフ解読を成し遂げたシャンポリオンバイエルンの狂王ルートヴィッヒ2世、アラビアのロレンス、そして飛行機の曙時代に活躍したパイロット、ジャン・メルモズといった面々で、あまり「特別にすぐれた人物」(広辞苑より)とは言えないように思います。

 

これは本書の原題、”Histoires Extraordinaires"の訳し方にもよるのでしょうが、フランス語の「Extraoridineires」は「素晴らしい」「特別優れた」という意味もあるものの、「奇妙な」「変わった」という意味もあるようで、どちらかと言えばその意味の方が強いのではと思います。

もちろん、訳者として名を連ねた人々はフランス語の専門家で、承知の上だと思いますが、すこしそぐわないように感じます。

 

取り上げられた人物たちの中では、マンドランとジャン・メルモズは名前も初めて聞きました。

人格としてはとても「傑物」とは言えないようですが、それでもその業績(盗賊の業績とはちょっとおかしな言い方になりますが)は当時の社会では衝撃をもって見られたものでしょう。

 

ルートヴィッヒ2世はノイシュバンシュタイン城との関連で名前だけは聞いたことがありましたが、リヒャルト・ワーグナーとの関係など興味深いものがあったようです。

この辺の少し不気味な状況など、うまく伝えられていたようです。

 

アラビアのロレンス、トマス・エドワード・ロレンスは映画が有名になりすぎていてその実像はよく分からなくなっているようです。

しかし、この本で書かれているように「ロレンスがアラブ叛乱のために力を尽くしたのは本当だが、彼はあくまでもイギリスの工作員であった」というのが本当のところなんでしょう。

 

というわけで、ちょっと不思議な「傑物たち」の伝記でした。