爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「発掘! 歴史に埋もれたテレビCM」高野光平著

民間テレビが放送を始めたのは1953年8月、テレビCMというものも始まりました。

しかし残された映像がほとんど無かったためにその初期の姿というものはほとんど知られていませんでした。

 

ところが、映像制作会社のTCJという会社が製作したフィルムが同社の倉庫に残っていました。

それを京都精華大学が借り受けて整理に着手し、その後立命館大学が後を受け継いでアート・リサーチセンターに所蔵するようになったそうです。

そのほとんどがTCJが制作したテレビCMということで、1万本以上のフィルムでした。

それの内容の研究を始め、その一部を紹介するということです。

 

いくつかのテーマごとに分けて紹介されており、第1は「テレビCMの原始時代」、上記のアーカイブに収録された最古のものは1954年ですがそこから4-5年程度の創成期のもの。

第2は「珍しいCM」現在では絶滅した商品など。

第3は「高度成長の風景」今とはがらりと雰囲気の変わるものです。

その他、かなりマニアックなものまで紹介されています。

 

放送当初はコマーシャルの入れ方も試行錯誤が続き、アメリカの先行例を参考にしてはいたものの、なかなかスタイルも決まらなかったようです。

多かったのが「生コマーシャル」で、スタジオの片隅に簡易セットを組み、番組の前後にそこで商品説明をしたりしましたが、商品を机に載せて映すだけというものもあったようです。

またムービーフィルムを用いる動画CMもありました。

これは製作にも費用がかなりかかるため、簡単ではなかったようですが毎回同じ効果が期待できるということで徐々に増えていきます。

なお、この頃はアニメを使うことが多くかえって実写を上回る数があったようです。

 

昭和30年代という、高度成長が始まろうとしていた時期ということもあり、そこで宣伝していたCMの商品は今ではないものもあり、また今ではCMをすることなどないというものもあります。

今は無い商品のCMとして紹介されているのが「ソノシート」、「夢の百貨店オリエンタル中村」、「夢の国奈良ドリームランド」、「豆炭あんか」「布団袋」「樟脳」

商品は今でもあるが、CMなど考えられないものとして「積水工業のポリペール」、「専売公社のタバコ」

どれも私の年代にとっては懐かしいものです。

 

「トリスを飲んでハワイに行こう」という寿屋(サントリー)のキャンペーンは非常に有名なものでしょう。

しかし、そのCMをよく見ると、その商品はハワイ旅行そのものではなく「旅行積立預金証書」となっています。

1961年当時はまだ海外旅行が自由化されておらず、こういう形でしかできなかったようです。

 

1960年の衆議院議員選挙のために作られた自由民主党のテレビCMも残っていました。

この選挙は政党が初めてテレビCMを使ったことで知られています。

この時のCMでもっとも有名なのは、当時の池田隼人首相が少し演説をしたあと「私はウソは申しません」と語るものでした。

この時、自民党は5本のフィルムを作成し、それを放送したのですが、「ウソは申しません」のフィルムだけが亡失し、残りの4本が残っているそうです。

 

1956年の吉木産業という会社の「キングトリスガム」というガムのCMに、巨人軍の選手だった川上哲治氏が出演しているものがありました。

実は、川上の映像は引退後の監督風景はたくさん残っていますが、選手時代の映像はほとんどなく、わずかにニュース映画の映像があるだけです。

ただし、このCMの川上の出演場面はちょっと不思議な光景だそうで、空振りをした川上が噛んでいたガムを口から出してバットに張り付けて、それで打つと今度は場外ホームランというものだったそうです。

 

我が家でテレビを買ったのは、世間より少し早いかもしれませんが、昭和35年頃、私が幼稚園の時だったと思います。

その頃の番組もわずかに覚えていますが、CMも見ていたのでしょう。

この本で触れられたものも何となく記憶の片隅にあるようです。