爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「地球とは何か 人類の未来を切り開く地球科学」鎌田浩毅著

火山学者として有名な鎌田さんですが、地球の誕生から現在の様子まで地球科学の概略が見られるように幅広い内容で紹介されています。

細かい点はまたそれぞれの詳説を読めば良いのでしょうが、この本だけでもかなりのところまでは理解できそうです。

色彩豊かなイラストでの説明も分かり易くできています。

これで税別1000円というのはお買い得でしょう。

とはいえ、私はいつも通りに市立図書館で借りたのですが。

 

地球の誕生から地球内部構造までは、まだ諸説あるのでしょうがそれも広く紹介されています。

月の誕生もジャイアンインパクトでほぼ決まりと思っていましたが、捕獲説、共成長説というのもまだ否定されているわけではないようです。

 

プレートテクトニクス理論も、アルフレード・ウェゲナーの大陸移動説から始まった学説の発展から触れられ、第二次大戦中にドイツ軍のUボートの出没に悩まされた連合軍が大西洋の海底の地形図を観測したことにより、大西洋中央海嶺が発見され、そこからプレート移動の証拠が次々と発見されてきたことなど、興味深いエピソードで話がつながれています。

ただし、プレートテクトニクスでも説明できない謎がいくつかあります。

1、大陸の成長は急な時期と成長しない時期に分かれているのはなぜか。

2、大陸の成長期には激しい造山運動が起こりさらにマグマが大量に貫入するということが起きるがなぜか。

3、中央海嶺には常にマグマが上昇してくるがその下はどのような構造になっているのか。

4、マントル中に沈み込んだプレートはその後どうなるのか。

 

 

3億年前に誕生した超大陸パンゲアは知っていましたが、それ以前にも3回大陸がすべて合わさった超大陸というものができ、それが分裂するということを繰り返してきました。

これらの動きにもプレートよりはるかに深いところに存在するプルームと言う塊の動きが関わっていますが、このプルームの移動には数億年もの時がかかっており、これまでに数回しか動いていないようです。

このプルームテクトニクスはまだ研究が始まったばかりという状況であり、今後もさらに進展が期待されるようです。

 

気候変動については、これまでの地球史でははるかに大きな変動が起きており、長い目で見れば(これを著者は「長尺の目」と呼んでいます)徐々に冷却されている中で起きているものです。

二酸化炭素の移動についても化石燃料や人類の活動などよりはるかに大きな炭素移動があり、あまり神経質な行動には否定的であるように感じます。

 

最後には金属資源などの鉱産資源についても触れられています。

金やその他の重金属などは比重の関係で地球の核に沈み込んでいたものが、ホットプルームの上昇などで部分的に地表近くまで上がってきたものです。

そのため、存在も偏在しているのですが、それを引き起こした歴史も解明されつつあります。

金は密度が高いため地球の核に多く含まれています。

地殻には2ppbの割合ですが、核では1ppmあり、地殻の1万倍の濃度がありますが、それを取り出す方法はありません。

しかし地球内部の対流にのって少量ながら上昇したものが金鉱山となっており、人類の歴史でこれまでに10万トンが採掘され、可能量は100万トンだそうです。

 

地震や火山噴火などの災害についてはあまり記述がありませんが、「長いあとがき」に触れられています。

それによれば、9世紀にあった「大地変動の時代」と同様の状況が現在やってきているようです。

869年の東北地方を襲った貞観地震の9年後に、関東諸国地震という直下型地震、そしてさらに9年後にM9の東海から南海まで一度に連動した仁和地震という巨大地震が起きています。

その時には富士山、阿蘇山など諸国の火山も次々に噴火しました。

これからもその当時のような地震噴火が続くのでしょうか。

歴史に学べばそれらの災害への対策も進めて行けるはずです。

地球科学を学ぶ必要性もそこにあるのでしょう。