爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「世界の起源 人類を決定づけた地球の歴史」ルイス・ダートネル著

現在の人類の社会というものは、これまでの地球の歴史によりできあがっていると言えます。

それはどういうものなのか、非常に広い範囲の事柄を取り上げています。

著者のダートネルさんの専門は「宇宙生物学」

なにやら得体のしれない学問ですが、そこから見れば地球の歴史も分かるのでしょうか。

 

類人猿の中でもヒトは「ホミニン」と呼ばれる一集団を形成し、その中の一種が現生人類ホモ・サピエンスです。

東アフリカで起きた地殻変動で乾燥した気候により密林からサバンナとなった地域で直立し2足歩行することにより進化してきました。

 

これらを引き起こしたのも「プレートテクトニクス」です。

プレート同士がぶつかることで大陸に火山帯ができ、さらにぶつかりあったところが持ち上がり山脈ができました。

さらに、過去5000万年ほどの気候は徐々に寒冷化してきたのですが、その原因となったのもプレートテクトニクスであり、インドがユーラシアに押し付けられることでできたヒマラヤ山脈が雨で侵食されることで岩石中の珪酸塩が反応性を獲得し、空気中の二酸化炭素を取り込んで沈殿したために待機中の二酸化炭素濃度が減少していきました。

そのために温室効果が減少し気候は寒冷化し、雨が少なくなり乾燥していったと考えられています。

 

プレートテクトニクスが影響したのは、人類進化の過程だけではありません。

大半の古代文明はプレート境界の近くで発生しています。

そこには地震津波、火山噴火などの危険性はあるのですが、複雑な地形で河川が発達することで栄養物を補給する作用がある他、火山噴出物も植物の栄養素を多く含むために有利だったようです。

 

現在の気候というものを決めたのは、大陸の配置というものも大きな要因と言えます。

ユーラシア大陸はほとんど北半球に位置し、北アメリカも含めて北半球の68%が陸地であるのに対し、南半球は海洋がほとんどを占めています。

さらにパナマ地峡が形成されたことによりメキシコ湾流が勢いよく北上することになりました。

これは暖かい温水を北極に流すようですが、それにより海からの蒸発量を増やしそれが北半球に雪を降らせることとなり、氷床の形成を促進しました。

 

地球全体の気温の上昇というものが、5550万年前のわずか1万年の間に起きました。

それは大気中の二酸化炭素が急激に増加し、海底のメタンハイドレートも不安定化したことにより起きたと考えられています。

これにより地球全体の気温が5℃から8℃上昇しました。

この期間に多くの生物が影響を受け、偶蹄目、奇蹄目、霊長目の生物が一気に多様化しました。

20万年経って気候は元に戻ったのですが、この時期に生まれた動物たちがその後の世界を支配することになります。

 

現代社会では多くの元素を利用しています。

古代にはわずかな種類の元素しか使われていませんでした。

銅、亜鉛、錫、鉄、鉛、金、銀といったものでした。

しかし、現代では実に60種以上の元素が様々な方面で使われています。

レアアース元素や、白金族元素といったものですが、これらは地球の中での存在量が少ないものもありますが、多いものもあります。

ただし、いくら存在量が多くてもあまりにも希薄であり抽出が難しいものも多くなっています。

そのために、採算の取れるような状況で抽出できる場所は限られており、世界の生産の大部分は中国ということになっています。

技術開発によりレアアース類の需要が高まると、それを供給できるかどうかが大きな問題となってきます。

特にインジウムガリウム、リチウムは深刻な状態です。

 

石油を作り出した地球の歴史というものも偶然の連続だったようです。

白亜紀超大陸パンゲアは分裂を始め大陸は再び拡散していきました。

その時ちょうど赤道に沿ってテチス海という水路ができました。

そこはプランクトンが成長するに適した状態であり、さらに海流が流れなくなったために死んだプランクトンがどんどんと海底に堆積していきました。

それが莫大な堆積物となり、さらに深海から地底に沈んで熱せられて石油となりました。

この条件が整わなければ今のような石油にはならなかったのでしょう。

 

様々な条件が一つ変わっても現在の世界とは違うものになっていたようです。

 

世界の起源: 人類を決定づけた地球の歴史

世界の起源: 人類を決定づけた地球の歴史