爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「複合不況」宮崎義一著

1980年代のバブル、そしてバブル崩壊という事態は日本にとって未経験のことであり、その後も長くその影響が続いてしまいました。

バブル自体の評価というものもその時には定まっていなかったのでしょうが、その崩壊ということも経済の専門家の間でもよく分かっていなかったことなのでしょう。

 

この本は、当時の理論経済学の専門家であった京都大学名誉教授の宮崎さんが、その結果の不況は「複合不況」とでも言うべきものであり、様々な要因が重なってできたものだということを書き記したものです。

 

もちろん、この「複合」と言う言葉はその少し前に有吉佐和子の小説「複合汚染」のタイトルとして使われて大きな話題となり、様々な汚染物質が重なり合って大きな汚染状態となるということを表しており、この頃の経済状態と印象が重なったことを意味しています。

 

1990年の日本経済は、バブルで上がり続けていた株価が暴落し、前年末に38915円の最高値をつけていたのが、その年末には23848円と大幅に下落しました。

しかし、その他の指標による実体経済は不況の様子もなく順調に推移していました。

このような、株価と経済の乖離という事態は経済専門家の常識を覆すものでした。

世界経済を動かすマネーというものが、実体経済からは遊離して動いていたという、それまでには想像できない事態が始まったということでした。

 

その後の流れはこの本の出版時にはまだ想像ができなかったのでしょうが、実体経済も長く停滞が続くというものになってしまいました。

しかし「マネーの暴走」ということがさらに拡大してしまったということはすでに確定した事実となっています。

それが確認されたということで、歴史的な本と言えるのかもしれません。

 

複合不況―ポスト・バブルの処方箋を求めて (中公新書)

複合不況―ポスト・バブルの処方箋を求めて (中公新書)