爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「進化した猿たち1」星新一著

星新一さんと言えば、SFショートショートという分野を開拓し、日本のSFの先駆者の一人として有名ですが、どうやら、アメリカの一コマ漫画というものにも興味を持っていたようです。

 

「進化した猿たち」というシリーズで、星さんが集めた一コマ漫画をテーマごとにまとめて紹介するというもので、本書はその第1作でした。

 

日本では新聞などに掲載されるマンガというものは、4コマ漫画が多いようですが、アメリカでは一コマ漫画というものが多いのでしょう。

4コマ漫画では起承転結という言葉に表されるように、話の流れというものを重視しますが、一コマではそういったことはできません。

そのかわり、一コマの中に様々な要素を盛り込んで、ニヤリとさせるといったものが多いようです。

 

この第1巻で扱われているテーマは、「死刑」「刑務所」「裁判」「ボクシング」「アダムとイブ」など、あまりマンガにふさわしいとは思えない内容もありますが、そのようなテーマであっても含みを持たせ、考え落ちとでも言えるような内容となっています。

おそらく、新聞などに掲載されたものを見ても、深い意味までは分からなかった読者も多かったのではないかと思いますが、そういったところもアメリカの人々の心を捉えていたのでしょう。

 

刑務所の中を扱った作品の一例です。

アメリカでは刑務所の床を掘って脱獄を図るということが昔は行われていたようですが、掘っているうちに宝の箱を見つけたという絵で、そこに付けられた文句が「穴を掘って逃げる作戦は買収作戦に変更だ」というものです。

一コマの絵ですべてを表現するので、細かい点まで書き込んでいるようです。

宝箱は伝統的な「海賊の宝」風に描かれています。

 

同じく、刑務所に面会に来た肉感的な女性。

面会相手の旦那に向かって、「あなた、かなり警戒されているのね。面会前に看守が4人がかりで身体検査をするんですもの」

これは、女性のスタイルと服装でいかにもそれらしく描いています。

 

アダムとイブの話は繰り返し描かれているようです。

二人だけの会話でイブが「あなたってすてきよ。アダム。でも最初の男性に飛びつくのは少し軽率なような気もするの」

若い女性がよく言うような言葉ですが、この場合はどうでしょう。

 

これも一つの文化だなと思わせるものでした。

 

 

進化した猿たち 1 (ハヤカワ文庫 JA 51)

進化した猿たち 1 (ハヤカワ文庫 JA 51)