著者の伊藤さんは高校の先生ですが、地理が専門で日本地図学会でも教育関係で活動をされているようです。
現在はインターネット上で地図ばかりでなくいろいろなデータを取得することができます。
また、地図もフリーソフトを利用して書くことができ、ネット取得したさまざまなデータを地図に貼り付けたり場所をずらしたり、過去に遡って現在までの変化を表現したりということが簡単にできるようになっています。
そのような操作でできた地図というものを見てもらい、興味を持ったら自分でもやってみたらいかがでしょうかというのが、この本のコンセプトです。
著者の住む静岡県東部地域のコンビニ分布図というものも簡単に表現できます。
各チェーンのサイトから住所録を作り緯度経度情報に変えて地図に落とし込めばその分布図ができます。
さらに、店を中心に半径500mを商圏と考え円を描くと、どこの円にも入らない「コンビニ商圏空白域」というものがはっきりと見て取れます。
さらに人口密度の図と重ね合わせればコンビニが欲しい地域というものも見えてきます。
まあ、コンビニチェーン各社でも同様の操作をしているはずで、それで出店候補地も探すのでしょうが、実際にマクドナルドはこのような地域情報システムを確立しているそうです。
Google Earthは私も頻繁に使用して各地のイメージを掴んでいますが、これを利用して簡単に「空からの工場見学」ができるということを本書で紹介しています。
全国製鉄所MAPというものを参照して各地の製鉄所を見ると、高炉のあるところには必ず鉄鉱石と石炭が野積みしてあるところがはっきりとわかります。(赤茶けて見えます)
造船所もリストアップしてみると必ずリアス式海岸の入江にあることが分かります。
これも歴史的に造船に好適な地形を利用した経緯のためでしょう。
静岡県のかつての女子校には定時制課程をもつ高校が多かったそうですが、そういった学校を地図上に表示すると、「湧水」と重なるそうです。
これには歴史的に理由があり、かつて大きな紡績工場は湧水池のそばに作られていたのですが、そこに働く女子工員が定時制高校に通ったためにその付近に定時制女子校ができたということです。
災害のときの被害の状況を予測する「ハザードマップ」というものが自治体でも作られて住民に配布されていますが、これも自分で加工して見やすく作り直すことができるそうです。
国土交通省の「国土数値情報ダウンロードサービス」というところから、無料でデータを得ることができ、それを地図ソフトに入れることで使いやすいハザードマップにできるということです。
私も子供の頃から地図好きですので、興味深い内容でした。やってみようかなと思わせるものです。