近年多くの大地震が発生し、今年に入ってからも熊本地震、鳥取地震と続いています。
そんな中、建物の地震に対する強さを求める傾向も強まっており、高層建築ばかりでなく個人住宅でも耐震性などが言われることも珍しくなくなりました。
とはいっても、耐震性、制震、免震などの言葉は聞いてはいても細かいことまではわからなかったので、この辺で少し基本的な知識を確認しておこうとこの本を読んでみました。
ただし、本書は2010年出版ですので東日本大震災もまだ起きていない時点でのものです。とはいえ、この地震では建物強度はさほど問題となっていませんので建築からみた地震というものはまだ変わっていないと思います。
耐震、制震、免震と言葉はいろいろありますが、これらは使い方がやや違います。
地震に対する耐震構造としては「剛構造」と「柔構造」の2つがあります。
日本の古い木造建築では柔構造の考え方が一般的だったのですが、明治以降の建築では剛構造でがっちりと作ることが「=耐震」と考えられてきました。
一方、制震、免震はどちらも柔構造の考え方が基本にあります。
制震では地震の揺れのエネルギーを吸収して揺れを抑えるというもので、建物の内部に重りやダンパーを置き、揺れを吸収したり、水槽に大量の水を蓄えて揺れを抑えるというものです。
免震は今でも多くの高層建築で採用されたということがニュースにもなったりしていますが、建物を支える部分に免震ゴムという柔軟性のあるものを入れ、そこで地震の力を吸収するという装置を加えるというものです。
地震の発生という点では、「日本は世界一の地震国」という感覚が一般的でしょうが、実はそうではないそうです。
国別の地震回数では中国が一番、次いでインドネシア、イラン、となり日本は4番目とか。
ただし、国土面積あたりの地震頻度を取るとそのランクは大幅に変わり、一位はコスタリカ、ついでキプロス、アルバニアとなりこちらも日本は6番目です。
しかし、地震に対する意識や対策と言った面では文句なしに「世界一」となるそうです。
地震対策の主な歴史としては、
1950年に建築基準法制定。
1964年の新潟地震で流動化現象の発生、石油プラントの耐震性の問題点露呈
1968年の十勝沖地震で新しいRC建築物に被害多数。またちょうどこの年に霞が関ビル完成。
1981年、宮城県沖地震で鉄筋コンクリート被害多発のため、建築基準法施行令を改正し、新地震設計法に移行。
1995年兵庫県南部地震
となっています。
耐震構造としては、3つの仕組みを組み合わせています。
それは、ブレース構造、面構造、ラーメン構造で、筋交いを入れ、壁構造で強度を出し、太い柱と梁を頑丈につなぐラーメンで水平力に対抗するというものです。
重りやダンパーを使う制震装置(制振とも書く)は地震の揺れだけでなく風による横揺れにも効果があります。したがって、世界の高層建築では地震の少ないところでも採用されているようです。
フランク・ロイド・ライトの建てた帝国ホテル旧館は関東大震災に見回れましたが倒壊せずに無事でした。
しかし、その構造はかなり問題点を抱えており、その地震耐性は「偶然」地震の周期と一致しなかっただけという見方もあるそうです。
本書を読んでみて、どの程度の耐震性があれば良いのかということは分かりませんでした。
どんな地震が来ても大丈夫といった建築はないそうですし、強度ばかりを上げるのも現実的ではないようです。
まあ、すぐに潰れてしまうのも困るでしょうが、中の人が無事に避難できる程度というのが必要なことなんでしょう。
熊本地震でも我が家は少しヒビが入った程度で済みましたが、地域が少しずれれば同程度の建物でも大きな被害が出ていたようです。
しかし十分な耐震構造にするにしても建築費が倍もかかれば家など建てられないという問題もありそうで、難しいところです。