ネット通販の増加が近年非常に顕著となり、少し前には宅配業者の処理量上限を越えたといった話題も出ていました。
しかし、今年の新型コロナウイルス感染拡大で、否応なしにさらに通販増加が続いています。
最近はさらに飲食店の営業制限が強まったため、デリバリーと称し(これを「出前」と言ってはいけないようで)自宅やオフィスまで配達してくれるというサービスが(都会では)広まっているようです。
まったく、便利?な世の中になっていきます。
しかし、こういった便利さの裏には宅配業者やデリバリー代行業者などの作業者の業務増加があります。
たまたま?ほかの業種の労務状況の悪化が激しいために職を失った労働者がこういった業種に流れ込み、極めて安い労賃で働いているために成り立っているということも言えそうです。
ネット通販は私も時々利用していますが、近くの店ではなかなか入手できないようなものが主体です。
電気製品などは意中の製品が店舗で見つかるとは限らず、結局取り寄せとなることも多く、それなら初めからネット通販利用の方が早く手に入ります。
しかし、日用品や食品などはちょっと通販利用というのは考えにくいものです。
我が家は私も家内も暇人で、仕事もしていないので時間は十分にあり、さらに車の使用も問題ないため、スーパーやコンビニ、ホームセンターなどに買いに行って少しでも安く購入する方が得なためです。
これは今では人によってかなり事情が変わるところです。
多くの世帯では夫婦でも共働きが普通であり、彼らはどちらも昼間は買い物に行くこともできないので、どちらか早く仕事が終わればそれから買い物に行くしかありません。
そうなると、たいていの職場では5時過ぎに退社、それからスーパーに駆け込んであわてて買い物と行ったことになります。
このような世帯にとっては食品や日用品もネット通販で購入し退社時間に合わせて配達してもらうか、あるいは宅配ボックスとやらに入れてもらう方がよほど余裕のある生活ができ、多少の配送費を払っても十分に元が取れるというところでしょう。
こういった小売業と消費者の購入行動といったものはどういう経過をたどってきたのでしょうか。
田舎でも自動車使用がそれほど普通とは言えなかった時代では、買い出しに出る人(かつては主婦が多かったのでしょうか)が行ける範囲に最低限の買い物ができる店がある状態でした。
かなりの田舎でもせいぜい自転車などで行ける範囲に「なんでもや」といった店があったものです。
そこで食品や日用品を買って帰るという消費行動をしていました。
しかし、自動車が普及し自動車社会となってくるに従い、こういった世帯の買い物担当者(これも主婦だけだった時代から変化が起きますが)も自動車を使うようになり、行動範囲がはるかに拡大します。
そうなると、店舗の商圏もはるかに拡大し、価格が安く品質も良い品物を揃えた店が有利となり、客を広く集めるようになります。
このあおりで、かつての町中の小売店も次々と消えていきました。
そして、最近になってほとんど大型店ばかりとなり、他の業態の小売店はほぼ壊滅しました。
これがさらに変化していき「ネット通販ばかりの世の中」になるかどうか。
これはとにかく「配送費用」が抑えられるかどうかにかかっているでしょう。
現在でも多くの宅配業者が作業員の確保に苦心していますが、安い給料でなければ配送料金を低くすることもできず、業務量は増加し、労働条件が悪くなる一方です。
今後さらにネット通販などへ移行していけばさらに宅配業者の業務量は増え続けます。
ドローンなどを使った無人配送などということも検討されていますが、この莫大な配送業務量をこなすのは何時になるか分かったものじゃありません。
今後も、通販やデリバリーの需要は増えるでしょうが、労働者の確保が難しくなれば徐々にその給与も上がりそれが配送料にも反映して徐々に価格も上がるでしょう。
それがどの程度まで許容されるか。
都会の高給取りばかりが住む地域であればかなりの価格になっても可能でしょうが、地方では不可能です。
ここでも都会と田舎の地域格差が反映していくのでしょうか。
今後も徐々に通販の増加と実際の店舗をもつ小売業の企業の撤退(倒産)が続くかもしれません。
しかし、町中から小売店がすべて姿を消し、宅配業者やデリバリー配達業者たちが走り回るという社会像もやや想像しにくいものです。
その混じり合った状態がかなり長い間続くのかもしれません。