かなり古い本なのですが、中身はそれ以上に古色蒼然といったものです。
購入した本は第15刷で1986年出版ですから買ったのはその後のはずですが、初版は1977年発行です。
著者の梶村さんは朝鮮近現代史が専門ですが、一応朝鮮半島の古代の歴史から書かれていますが、やはり主力は李氏朝鮮末期の日本や清、ロシアとの関わりが強くなって以降の部分でしょう。ページ数もそれをはっきりと示しています。
なお、時代もあったのでしょうが著者は左翼的な立場を強く持っていたようで、著述もそういった傾向によっています。77年といえばまだ北朝鮮の破綻も明らかではなく、韓国の経済成長も現れる前で軍政時代の名残も強かった頃でしょう。したがって、かなり北朝鮮寄りの著述内容となっていますが、もし著者が現在の状況を踏まえて書きなおせばどのようになったでしょうか。
ただし、調べてみると著者の梶村さんは1989年にまだ50代の若さで早逝されています。かえって幸せだったのかもしれませんが。
著者の意向とはずれますが、私自身の朝鮮半島歴史に対する興味というものは、やはり圧倒的に古代史にあります。
百済や新羅、高句麗などと大和朝廷との関係は非常に興味深いものですが、本書ではそこは簡単に触れられているのみで、他書に譲っています。
しかし、大きな影響を大和が受けていたのは間違いがないにも関わらず、逆に朝鮮を支配していたかのような伝説を作り上げたのが日本の近代の歴史観でした。それはきちんと批判してあります。
その後の高麗王朝から李氏王朝へと移り変わっていくのですが、高麗から李朝への移行では社会的な変革が非常に大きかったようです。
高麗ではまだ有力貴族の荘園制であったものが、李朝では両班貴族による官僚制が強化されます。
韓流ドラマの歴史ものでも色々と描かれているところですが、どうもあのドラマ群の歴史的な正確さは乏しい物のようです。楽しめれば良いのでしょう。
近代以降の日本も含めた半島史は日本人もしっかりと知識を持たなければいけないところでしょう。その上での相互理解というものが必要になるのですが、あやふやなままでいくらそれを唱えても間違えるばかりです。
しかし、細かい記述を追っていっても日本人としては嫌になるようなことばかりですが。