爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「君は韓国のことを知っていますか?」鈴木崇巨著

日韓関係は非常に悪化し、相互に相手国を嫌いと答える人々が多数を占めるという事態になっています。

日本では慰安婦問題や徴用工問題など、条約締結で解決済みの問題を持ち出して国際法違反だという論調が多くなっています。

 

本書著者はキリスト教の牧師で、韓国の教会関係者との交流も多く、その視点から言えばやはり植民地支配の過程で多くの非人道的な行為を重ねた日本に非があり、しかもそれをほとんどまともに謝罪したことも無いためにここまでこじれたという見方をしています。

 

日本が明治維新以降朝鮮半島から大陸に侵略の手を伸ばす中で、朝鮮の国や人に対しての侮蔑感を日本人に植え付けようとし、それは国の中に広く行き渡ってしまいました。

今でも日本人の年長者を中心にその意識が抜きがたく残っています。

 

しかし多くの韓国人と交流の深い著者から見ると、韓国人は決して侮蔑されるような人々ではなく、かえって朱子学を中心とした儒教を深く取り入れ、また一族の結束も強いという美点を多く持っていると感じています。

 

朝鮮民族は現在日本にも中国にも多数が住んでおり、さらにその他の国々にも移住しています。

これは日本による植民地支配の時代に土地を収奪され経済的に困窮して国外に逃れたという理由でできた状態です。

こういった歴史を韓国では学校で教えますが、日本ではほとんど授業では扱いません。

そのことがいつまでも歴史問題が問題化する基になっています。

 

日本は帝国主義による戦争の時代が敗戦によって終結し、「戦後」という言葉が普通に使われてきました。

しかし、韓国では日本の敗戦で独立を回復したと思う間もなくソ連アメリカの間の争いの戦場となる朝鮮戦争が起きました。

その戦争状態がまだ終わっておらず、韓国には「戦後」という意識がありません。

もう100年も苦しみ続けていることになります。

 

韓国はキリスト教徒が多いのですが、日本のようにキリシタン伝道というものは当時の李王朝が鎖国政策をしていたためにありませんでした。

ようやく18世紀末になって中国でキリスト教に入信した李王朝の官吏が帰国し初めて国内にキリスト教が伝わりました。

しかし李王朝は信者の迫害を続けたため、非常に多くの殉教者が出ています。

その数は正確には分かりませんが数万人にもなると推測されています。

こういった迫害が強まるほど、キリスト教徒の信仰はかえって強固なものとなりました。

朝鮮戦争休戦時にはキリスト教徒は人口の3%程度であったものがその後増え続けて現在では30%以上になるそうです。

儒教的な体質とキリスト教が結びついたために、カトリックではなくプロテスタントでもピューリタン的な宗教となっているようです。

 

韓国人は正義と言うものに非常に強い思いを持っているということです。

日本に対して批判的なのも、多くの迫害をしたことについて心から謝罪をしてこなかったことによります。

真の謝罪をすれば韓国人は必ず赦すだろうということです。

 

グローバル化などということを言う人が多いのですが、この問題を軽視していてはそんなものなど成り立たないということでしょうか。