爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「JR九州のひみつ」PHP研究所編

JRグループの中でもJR九州は元気の良さではトップクラスのようで、超豪華クルーズトレイン「ななつ星in九州」を始めとしていろいろな観光列車はたびたび取り上げられており、また本業の収支は黒字化は無理ですが関連事業まで入れた収支は十分に利益を上げるまでになっており、もう一方の日本のはずれのJRのように悲惨な現状と比べるとその好調さは際立っているようです。
現在は熊本に住んでいるのですが、普段はほとんど鉄道利用の機会もないとはいえ、ちょっと出かけるとなるとお世話になることも多いところです。

本書はそんなJR九州についてさまざまな角度から取り上げられており、特に詳しいものではありませんが広く知識を取り入れるには好適なものと言えます。

私自身は九州の鉄道というと大きく言って3回深く関わってきています。最初は子供の頃に父の転勤で福岡に3年間住んだ時のことで、父は九州に住むことなど二度とないと考えたのか、あちこち観光に連れて行ってもらいましたが、そのほとんどは鉄道利用でした。最初に福岡に行ったのは1962年ですが、まだ博多駅は旧駅の頃でしかも蒸気機関車牽引の客車列車でした。それから3年たって東京に戻る時には博多新駅も開業しておりました。
次は1978年に就職して熊本に来てからのことで、まだ独身で身軽だったこともあり、列車で出かけることも多かったのですがその時代の状況はまだ国鉄時代でもあり寂れる一方というイメージでした。
そして、最近のJR九州の動きは目を見張るばかりです。新幹線も身近なところを走っていることもあり、またSL人吉号も何度も見には行っています(乗ってみたいものです)

そこで、本書に戻りますが、駅・車両基地、路線、車両、歴史、トリビアとさまざまな記述があり、知らなかったことも結構含まれて居ます。
駅ではやはり博多駅が一番ですが、九州での鉄道発祥も博多駅が最初だったようです。門司から先に来たような気がしますが、1889年に私設の九州鉄道が開業した時に博多が起点とされたそうです。しかしその位置は現在とは違っていました。
車両基地では新幹線全面開通時に開業した熊本車両所が最大のものです。これは建設当初から目にしていましたので一度は見学してみたいものです。
走っている車両は最近よく報道もされているように、水戸岡鋭冶さんが新幹線やななつ星を始め多くの車両のデザインを担当しており、魅力の溢れるものが多くなっています。「ゆふいんの森」が最初かと思っていたら、1988年に登場した海ノ中道までの「アクアエクスプレス」が最初だったようです。
しかし、なんと言っても記憶に残っているのは鹿児島線の特急として長く活躍した「787系つばめ」でした。博多から西鹿児島までの特急として新幹線開業まで運行していました。ちょうど博多や鹿児島などへ出張の機会も多かった時でしたのでよく利用しました。シートも快適で内装も東海道新幹線などよりもよほど豪華に感じました。さらにビュッフェも営業しており全国的に見ても素晴らしいものと思いました。
新幹線の鹿児島から新八代までの部分開業以降は博多から新八代までの「リレーつばめ」となりましたが、新八代駅での同一ホームでの新幹線連絡の光景も懐かしい思い出となってしまいました。

上記のように、博多駅のちょうど新駅開業の頃には福岡で小学生時代を過ごしており、何度か新駅も利用しましたが、周りは空き地ばかりのなかで大きなビルが建って何か異様な雰囲気でした。今では周囲のビルが高くて駅が埋もれるほどの状態ですので、隔世の感がします。
電化工事もちょうどその頃から始まったということで、雑餉隈から久留米までの地上設備が1960年に完成しそれから順次工事が進んだそうです。しかし、「雑餉隈」(ざっしょのくま)という駅名は懐かしい響きで、現在の南福岡だそうですが、その地名もなくなってしまったそうです。福岡在住時はその近くに住んでいましたのでさびしい思いを感じます。
鉄道の歴史では1980年ごろからの赤字ローカル線の廃止と言う動きが無視できませんが、九州でも23路線が廃止されました。しかし、そのうち8線区は第3セクター化され、水害で復旧不可能となった高千穂鉄道以外は存続しているそうです。やはり必要性があったのでしょう。

水戸岡さんのデザインした車両は日本の鉄道友の会の表彰の「ブルーリボン賞」とともに、国際的な顕彰の「ブルネル賞」も重ねて受賞したそうです。そういった賞は知らなかったのですが、それにふさわしい車両であると思います。
なお、JR九州の社歌と言われる「浪漫鉄道」はハイファイセットの昔からのファンであるということもあって以前から知っていましたが、本書でも紹介してあります。まだそのまま使われているのでしょうか。

JR九州はいやでも使わなければいけない立場でもありますが、できるだけ応援していきたいと思わせるような存在でもあります。これからも元気で続いていって欲しいものです。