爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

賞味期限偽装に関連し その意味を考える

宮城県の業者による冷凍食品の賞味期限偽装などの事件について取り上げましたが、その行為は非常に悪質と考えられるものの、だからといって賞味期限が来た食材を簡単に廃棄としてしまう行為にも抵抗を感じてしまいます。

 

一般の人々には賞味期限が一日でも過ぎるとそれがもう毒物にでもなったかのように思う人もいるようです。

しかし、一応長く食品関係の会社に勤め、品質管理なども担当していた身から言うなら、そういった反応も非常に問題のあるものと感じられます。

 

そもそも、賞味期限というものは製造会社が自らの責任の範囲を明らかにするために表示するものです。

賞味期限が来ていないのに品質に異常がある場合には製造会社が責任を取るというのが本来の意味でしょう。期限が過ぎた後の製品に異常があってもそれは製造側の責任ではないということでもあります。

 

実際に賞味期限の設定ということは厳密に行うならば製品を一定期間保存しておき劣化状況を調査していくという保存試験というものを理論的に行う必要があります。

しかしこの試験を科学的に行うということは簡単なことではありません。

まず、長期の保存期間の食品についてはその変化のばらつきも大きく一定の期間設定は困難と言うことになります。保存状態の均一化も難しく温度変化、包装資材のばらつきなど少し違っただけで大きな結果の違いに結びつきます。

そもそも、製品の品質自体の製品ロットによるばらつきも小さなものではありません。これはその製造者の技術水準によっても異なります。技術が高い製造者ならばばらつきを小さくすることもできますが、レベルの低い製造者では作るたびに全然違う製品ができるということもよくあることです。

 

このような難しい保存試験を行うことは大企業ならともかく、中小企業ではまともに実施できないところも多いでしょう。したがって、賞味期限の設定も何となく同業他社の製品に合わせておくという対応も普通ではないでしょうか。

かえって、同類の製品の中で賞味期限に差があると「長いのは保存料を使っているからだ」などと言われることもあるようです。しかし、本当は賞味期限が長い製品は製造技術が優れているからと言えるわけです。

このあたり、FOOCOM.NETの「ヤマザキパンはなぜカビにくいか」という記事で詳しく論じられているのでご参考まで。

 

このように保存試験で「製品が劣化する最小期間」というものを設定してもそれをそのまま賞味期限にするわけではありません。その最小期間よりはるかに短い期間を賞味期限とするわけです。

(たとえば劣化するまで1年かかったとすると賞味期限は3か月とする)

これは製品のばらつきを考慮すれば仕方のないことですが、実はここに企業の思惑もあります。

賞味期限を短くするほど製造者にとっては利益になるのです。購入した消費者が賞味期限まで使わずにいてそれを廃棄し、また新たに買ってもらえれば売り上げが増えます。

そのために必要以上に賞味期限を短く設定する業者が無いとは言えないように思います。

 

食品の廃棄というのも大問題です。食品表示偽装と言う行為は食品衛生法違反ということで罰せられる以上に社会の総攻撃を受けますが、短すぎる賞味期限を設定する行為が批判されることはあまりありません。

本当にそれでいいのか、疑問があります。

 

一般消費者の方にお願いしたいのは、あまり賞味期限を鵜呑みにせずに自分の五感で見極めてもらいたいということです。「もったいない」と言う言葉をきちんと使ってほしいと思います。