爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「民間療法は本当に『効く』のか」大野智著

民間療法、正式には補完代替療法と呼ぶのですが、健康食品やサプリメントの他、マッサージやヨガ、鍼灸まで含まれます。

玉石混交というか、石ばかりというような気もしますが。

しかし世の中にはそういったものがあふれており、コマーシャルも延々と流れ続けています。

そういったものに詳しい医師で大学病院教授という大野さんが、その効果はどうか、またそのような療法に頼ってしまう患者の心理、そしてどういったものに注意すべきかというヘルスリテラシーまで解説しています。

 

最初に健康食品や機能性食品といったものについて考えていきます。

機能性表示食品というものが制度化されているため、食品の機能というと何か健康に良いものといった印象がありますが、実は食品の機能には3段階あります。

一次機能としては栄養面での働き。二次機能として嗜好面での働き。そして三次機能が生体調節面での働きというものです。

一次・二次はたいていの食品であれば何らかの作用がありそうです。

ただし、どうやら「売るがため」の販売戦略としてこの食品機能というものが使われているようです。

わざとあいまいにして、一次・二次機能はあると強弁し三次機能があたかも優れているかのように印象付けるという手を使っている例もあるようです。

 

健康食品のCMで「何に効きます」と言ってはいけないということは知られてきたようですが、それでもまだそのようなものが見られます。

しかし今度は大手企業を中心に「臨床試験実施」といったデータを出す例が増えてきました。

実際に臨床試験実施報告というものを参照すると食品での実施例が急増しているそうです。

ただし、その内容を見てみると確かに科学的な手法は踏襲しているものの、限られた範囲でわずかな効果が上がっているといったものを、誰にでも効くかのように主張することが頻繁にみられるようです。

これを見るのが「PICO」という思考法で、Patients、Intervenntion、Comparison、Outcome、すなわち誰に、何をすると、何と比較して、どうなるか、ということを整理して考えるべきだということです。

あげられた例として、P中性脂肪少し高めの人が、Iトクホを毎日摂取すると、Cプラセボを毎日摂取した場合と比較して、O中性脂肪値がわずかに下がった。というものがあったそうですが、この食品を「何にも異常値の無い人が」「予防的に」食べることなどは何も調べられていないのだということです。

 

情報リテラシーなどと言う言葉で知られる「リテラシー」ですが、健康や医療に関する情報についても「ヘルスリテラシー」というものがあります。

健康情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力を言いますが、最近は国際的に共通の尺度が作られており、国別の比較もされています。

日本人のヘルスリテラシーは諸外国と比べて低いということが指摘されています。

 

しかしなにしろテレビを見ていると健康食品のCMばかり、ワイドショーでもCMまがいの内容、ネットで調べても最初に出てくるのは販売情報ばかりというのではどれが正しいものかを見分けるのは難しくなっています。

この本では正しい情報の調べ方というものも紹介されています。

 

補完代替療法について、病院でかかりつけの医師に相談してもなかなかまともな答えは返ってきません。

医師はこれまでは通常の医学教育の中では代替療法についてほとんど習っていません。

そのため、ほとんどインチキという偏見を持っている場合もあります。

しかしそんなものは止めろというだけの根拠を持たない場合も多く、「自己責任で」というしかない場合が多いようです。

ただし、医師も患者が代替療法に向かってしまう心理というものを理解する必要があるということです。

 

なかなか難しい状況になっているようです。