爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「『ニセ医学』に騙されないために」NATROM著

「ニセ医学と闘う内科医」NATROMさんは、その「NATROMのブログ」を以前から読ませていただいていましたが、書籍も何冊か出版されています。

そのうちの最初に刊行したものがこの本です。

なお、この本のみ著者名を「NATROM」としていますが、その後の本は「名取宏」名と変えており、この本もその後その名義に変更しました。
このあたりの事情はブログにも書かれていますが、日本ではやはりまだローマ字名の著者名というものは受け入れられない人も多いようで、出版社の勧めもあって漢字名に変更したということです。

この「名取宏」も本名ではなく、「NATROM」をそれらしい漢字に移し替えただけだそうです。

 

日本だけに限らないのですが、現代医学というものに対する不信感というものには根強いものがあり、そこに付け込もうという「ニセ医学」も深く広くはびこっています。

その中にはさまよえる人々を見かねてという良心的なものもわずかにあるようですが、ほとんどは金儲けを狙った連中が迷う患者を食い物にしようというものです。

 

この本では、そういったニセ医学を「現代医療編」「代替医療編」「健康法編」に分けて解説しています。

なお、その実例の多くは具体的にその療法名、実施施設名、さらに主催者の個人名まで記載しており、読んだ人やその知人たちが騙されないようにと言う趣旨でのことと思います。

しかし、おそらくそういった連中からの反発は相当なものと思います。

NATROMさんが匿名で活動しているというのも無理からぬ話かと思います。

 

内容はNATROMさんのブログでもこれまでも触れられたいるものも多く、また有名な事例も多く含まれているので細かくは紹介しませんが、いくつか挙げておきます。

 

自然分娩を礼賛し、現代医学による出産を非難するという人たちもいますが、その中で愛知県のY医院(本の中では医院名も医師名も実名ですが、ここではイニシャルとさせて頂きます)のY医師は「自然の物を食べて自然な心でおって、自然に体を動かしていればツルツルに生まれますよ」などと主張しているようです。

しかし、それに続けて「産むべき人じゃない人は死んだんだよね」などと言っているそうです。

これは自然淘汰だとでも言うのでしょうか。

よくこんなところに行こうという人が居るものだとあきれます。

 

水素水やアルカリイオン水など、いろいろな水を高価で販売している人たちがいます。

こういった医薬品でないものを効果効能をうたって販売すると薬事法などに違反するということで、実際に検挙される例も多数あります。

しかし、医師が処方する場合は「医師の裁量権の範囲内」であるとされ、薬事法違反にはならないそうです。

医師はそれだけの知識と責任を持っているというのがその理由ですが、それに値しない医師もかなり居るようで、まったく科学的根拠のない水などを高価で売るという連中がかなり横行しているようです。

まったく健康な人が騙されて金を取られるだけなら、毒にもならない(薬にもならない)水を飲むだけでまだマシなのですが、中には末期ガンの患者が探してたどり着くことも多いようで、文字通り「命を縮める」ことになる人もいます。

 

健康食品というものは、健康な人が気休めで食べるだけならまだ仕方ないのですが、実際にはこれで病気になるという例もいくつも出ています。

医師は肝障害の患者を診察する場合、色々な原因を考えるのですが、その中にかならず「健康食品・サプリメント」の可能性を考えるそうです。

ウコン粉末やアガリクス、羅漢果といった健康食品としておなじみのもので、かなりひどい肝障害が発生した事例があるそうです。

こういったもので病気になっても、医師を受診する際にそういった食品を食べているということを隠すことが多いようで、注意点だそうです。

 

いやはや、怖いものですが、知らない人が多いということがもっと怖い。

 

図書館が休館してしまい、仕方なくブック○○に出かけて本を探したのですが、以前から発行されていることは知っていたNATROMさんの本がなんと220円(税込)で売られていたので急いで買いました。

この本は保存版でしょうが。一読しただけでパッと売ったんでしょうか。

まあ、そのおかげで入手できましたが。